著者
杉野 駿
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究はフランス啓蒙主義の哲学者ドゥニ・ディドロの美学理論である「理想的モデル」論を、その生成と同時代の理論との関係に着目しながら検討する。「理想的モデル」とは『百科全書』の項目「ADMIRATION」から『俳優に関する逆説』までおよそ20年間かけてディドロが様々な文脈において使用しつつ彫琢した概念である。この概念を中心に展開された理論は、深源をプラトン哲学に持ちながらも、観念論と唯物論の弁証法のなかでの「判断」の契機の特異な位置づけを浮き彫りにする点で18世紀の美学理論のなかでも特筆すべきものである。本研究は、この理論の美学的達成と同時にその政治的含意をあきらかにすることを目指す。