著者
李 哲漢 李 恩善 篠原 啓方
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ5 『船の文化からみた東アジア諸国の位相―近世期の琉球を中心とした地域間比較を通じて―』
巻号頁・発行日
pp.89-101, 2012-01-31

朝鮮時代の船舶、つまり「韓船」は、伝統的かつ独特の形態を有し、航海の目的に合わせて緻密に設計され、建造された。朝鮮時代の船舶については、朝鮮側の文献史料や日本の絵図、西洋人の記録などによって知ることができる。水中発掘調査も進められているが、いまだ朝鮮時代の船舶は見つかっていない。 朝鮮時代における輸送活動の中心は、川や海を行き来して税穀を運搬する漕運船であった。後期には商業の発達にともなって民間の船舶活動がさかんになり、朝廷では海税の管理のため、船舶の保有状況の把握、船舶区分などを進め、管理体系を整えていった。 一方朝鮮時代には、周辺国の海禁政策や、海難事故・密貿易の防止を理由に、朝鮮通信使以外の国外航行が禁じられていた。そのため外洋への航海技術はさほど発達しなかったものと思われる。