- 著者
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小池 一男
李 巍
- 出版者
- 東邦大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
認知症においては、記憶障害・見当識障害などの中核症状と共に、行動・心理的な周辺症状(BPSD)が患者の生活の質を著しく低下する。本研究では、認知症のBPSDに対する漢方薬の有用性を基礎科学的なアプローチにより明らかにすることを研究目的とした。前年度に引き続き、急性認知症モデルのスコポラミン誘発記憶障害モデルマウスにおいて、五苓散の作用を検討した。五苓散はオープンフィールド試験でスコポラミンによる自発運動量の増加を抑制したことに加え、強制水泳試験では、スコポラミン単独投与群よりもさらに無動時間を短縮させたことから、五苓散は急性認知症モデルにおけるBPSDの陰性症状および陽性症状の両方を改善する可能性が示唆された。作用機序については、五苓散の抗コリン作用を中心に現在、解析を行っている。一方、体内の酸化ストレスの亢進は認知症の発症を促進することが知られている。我々は先行研究において、医療用漢方製剤の抗酸化活性を評価した結果、抗お血作用を有する漢方薬は高い抗酸化活性を示すことを明らかにした。今年度においては、抗お血漢方薬の抗酸化作用の詳細を解析した。その結果、実証に用いられる抗お血剤は抗酸化活性の発現に相関が認められるた。漢方薬の中に、通導散と桃核承気湯は最も強い抗酸化活性を示し、構成生薬の中に、ダイオウとオウゴンは最も抗酸化活性に貢献した。現在、これら漢方薬の抗酸化活性を介した認知症のBPSDに対する効果を検討を行っている。