著者
石井 延久 高波 真佐治
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在、勃起神経の局所の損傷を正確に診断できる神経機能検査はない。今回われわれは低周波電気刺激による勃起の誘発と神経の伝導時間の測定方法を検討した。先ず、現在インポテンスの神経学的検査として行なわれている球海綿体誘発筋電図による潜時(bulbo-cavernosus reflex latency time:BCR-L)についてインポテンス343例の臨床成績を検討した。結果は勃起が可能であった若年症例のBCR-Lに延長がみられたり、明らかに勃起神経に損傷を有する症例のBCR-Lが正常範囲であったり、必ずしもBCR-Lの成績と臨床像が一致しないことを明らかにした。そこで、われわれは低周波電気刺激装置を使用して勃起の誘発と陰茎背神経までの伝導時間の測定を試みた。方法は麻酔科領域で疼通治療に使用されている硬膜外脊髄電気刺激法による勃起の誘発と脊髄-陰茎背神経の伝導時間の測定を試みた。症例は重症感電による下肢の痙性疼通と排尿障害を伴うインポテンス患者である。この症例では脊髄陰茎背神経の伝導は障害されており、電気刺激による勃起は誘発できなかった。しかし、脊髄神経の刺激により、下肢の痙性疼通と排尿障害は改善した。本法は脊髄刺激の方法を改善することによりインポテンスの治療に応用するつもりである。このように脊髄刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が容易に測定できることからインポテンス22例に経皮的に仙髄部に低周波電気刺激による陰茎背神経の表面電位変化の測定を試みた。結果は22例中17例に仙髄電気刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が測定された。その結果、仙髄-陰茎背神経の伝導時間は平均7.79msecで、所家の報告とほぼ一致するデータであった。本法は経皮的に電気刺激するため侵襲がなく、外来で容易に施行できるよい方法と考えられた。
著者
嶋武 博之 青木 継稔
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

myc系がん遺伝子としてC-myc遺伝子が多くの腫瘍や正常組織で発現しているのに対し、N-myc遺伝子は、特定の小児がんのみ発現しており、その発現の有無を調べることにより、がんの診断が可能になる。そこで本研究は、小児がん診断に役立てるためN-mycタンパクの定量測定法を可能にし、更に、早期発見のための方法を確立しようとするものである。神経芽腫においては、N-mycの遺伝子増幅について数多く調べられており、遺伝子増幅と神経芽腫の予後との関係が明らになっている。しかし、遺伝子増幅を伴わない予後不良例も報告されており、遺伝子レベルでの解析だけでは不十分であることが最近、指摘されている。また、網膜芽腫では、調べられた殆ど全症例においてN-myc遺伝子が増幅していないにもかかわらずN-mycタンパクの発現が見られるため、これらのがんの診断・予後の判定のためには、N-mycタンパクを検出し定量測定することが望まれる。この目的のために、N-mycタンパクの免疫学的定量法に必須の道具となる六種類の人工タンパクを、大腸菌発現ベクターを用い遺伝子工学的に作成し大量精製した。《1)N-myc特異抗原 2)pan-myc特異抗原 3)N-pan-myc特異抗原 4)抗ヒトN-mycタンパク特異抗体 5)抗pan-mycタンパク特異抗体 6)抗体吸収用cII-Nタンパク》 これらのタンパクはいずれも、N-mycタンパクの免疫学的定量を行うにあたり、特異性・力価が充分であることを確かめた。N-mycタンパクのサンドイッチ型ELISA法による免疫学的定量には、抗N-mycタンパク抗体を第一抗体とし、抗pan-mycタンパク抗体を第二抗体とした方が、その逆の場合よりも反応の特異性および効率の点で優れていることが明かとなった。この方法により、現在、培養細胞株および臨床材料を用いてN-mycタンパク量の定量測定を行いつつある。
著者
加藤 文男 寺田 宙 柴田 尚 杉山 英男 桑原 千雅子
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.キノコ生息土壌の調査:富士山麓のキノコ生息土壌を採取し、土壌pH,^<137>Cs, Cs, K量を測定した。土壌pHは3.5-5.5と大きく酸性に偏っていた。2.キノコ生息土壌に生息する微生物のCs感受性:13の土壌サンプルについて、生息微生物のCs感受性を調べ、一般に細菌のCs感受性は低く、放線菌は感受性が高いという結果を得た。三宅島で採集した土壌より200mMCsで増殖可能な高度耐性株Streptomyces sp TOHO-2を分離した。3.分離培地のpHの影響:分離培地のpHを5,6,7に調製し、分離される細菌、放線菌の数を測定した.細菌数はpH6で最も多く、pH7の1.6倍、pH5ではpH7の1.15倍であった。放線菌数はpHの低下と共に菌数が減少し、pH7のおよそ50%であった。4,キノコ生息土壌より分離した放線菌のCs取込:これらの菌株に蓄積されるCs量は20mg/g dry wt mycelia程度であった。K202株について菌体内Cs, K量および増殖についてpH5と7で比較すると、Csによる増殖阻害はpH7の方で強く現れ、Cs蓄積量の増加とK量の減少もpH7の方が強く現れた。5.チャンネル阻害剤4-aminopyridine(4-AP)の影響:4-AP存在下でのCs取込量の変化を調べた。4-APによる阻害作用はpH7で強く認められたが、pH5では4-APによるK量の減少は認められたが、Cs量は増加し、増殖にも影響は認められなかった。6.キノコ生息土壌より分離した細菌のCs取込:生息環境に近いpH5でCsによる増殖抑制が強く見られた。また、細胞内Cs蓄積量は調べたいずれの菌株でも5mg/g dry wt前後であり、放線菌の1/4程度であった。7.細胞内Csの局在化:土壌分離放線菌、細菌、いずれの場合も低真空SEMで輝点が観察され、輝点部分にはP. OとともにCsが認められた。輝点以外の領域には、Csのシグナルは観察されず、局在化による毒性の軽減が示唆された。8.ポリリン酸の関与:^<31>P-NMRによりS.lividanns TK24にポリリン酸が存在する事を確認した。ポリリン酸合成に関わるpolyphosphate kinaseをコードする遺伝子ppkの破壊を試みている。
著者
水野 文月 大橋 順 熊谷 真彦
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

列島日本人の成立を考えるためには、弥生時代人(渡来系弥生人)とはどのような人たちであったのかを明らかにすること、特に、ゲノム情報からその遺伝的多様性を明らかにすることは不可欠である。しかし、これまで限定的な報告しかない。そこで本研究では、大陸から渡来した人たちが最初に移住したと考えられている北部九州ならびに山口西部地域の弥生時代の複数の遺跡から出土した渡来系弥生人(古人骨)のミトコンドリアゲノムならびに核ゲノムの分析をおこない、渡来系弥生人の遺伝的特徴を明らかにした。
著者
坂本 正裕 有田 秀穂
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、ネコの脳幹を免疫組織化学的方法で染め出し、特定の表情筋を支配する顔面神経核内の細胞群とそこに投射する伝達物質を含有する神経終末の分布様式を化学顕微鏡で調べた。1)セロトニン含有終末は、顔面神経核内のいずれの亜核においても細胞体や近位の樹状突起に対して付着している様に見えた。その中で特に腹内側核と腹外側核には強い投射が観察された。このセロトニン入力の起始細胞は脳幹の縫線核にあると考えられる、縫線核の細胞の活動は日中増大し、夜間には減少する。したがってセロトニン入力の役割が覚醒時の口唇部の緊張維持に関係していることが示唆された。2)「痛み」に関係している伝達物質とされているエンケファリンは、主に眼輪筋を支配する運動神経細胞の樹状突起の遠心部に付着しているが、セロトニンにはそのような付着がみられなかった。このことは眼の周囲の表情形成にはエンケファリンの影響が強いと考えられる。3)p物質は主に近位の樹状突起に付着しており、鼻の周囲以外の表情筋の緊張(特に口唇部において)に関与している可能性があった。上記の研究成果は、情動表出における表情筋の動きが顔面神経核レベルでの神経伝達物質含有終末の分布差に影響されていることを示唆している。しかし、表情表出パターンの生成は、より上位の中枢で行われているらしい。そこで表情パターンの発生機構を探るために、予備実験をラットを用いて行った。顔面神経核に投射を持つ扁桃核を電気刺激した結果、中心核より深い部位の刺激は、血圧の上昇とともに刺激と同側の眼球突出や耳、口唇の動きを誘発した。また、顔面神経核に逆行性標識物質を微量注入して、扁桃核の吻側部の中心核付近に標識細胞を見いだした。これらのことは扁桃核が表情表出パターンの生成に直接に関与していることを示唆した。
著者
菊地 由美
出版者
東邦大学
雑誌
東邦大学医学部看護学科紀要 (ISSN:1880666X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.9-17, 2007

本研究は、外傷性嗅覚障害が患者の心身や日常生活に及ぼす影響および背景因子との関連性を探り、看護への示唆を得ることを目的とした。外傷性嗅覚障害の診断を受けた患者122名に質問紙調査を行い62名から回答が得られた。その結果、心身の変化や日常生活への影響について、「非常にある」の回答が多かった項目は、危険察知困難、障害の他者理解困難、情緒刺激の減少の順であった。また、「心身の変化や日常生活への影響」と対象者の背景因子をクロス集計し、カイ二乗検定を行った結果、「心身の変化や日常生活への影響」と「症状の変化」、「嗅覚所見」、「調査時年齢」、「受傷年齢」の間に、有意な関連性が示された。影響因子を多角的に捉え、その程度を知ることは、患者理解に有用な情報であることが示唆された。
著者
北薗 久雄
出版者
東邦大学
巻号頁・発行日
2014

主査: 髙橋啓 /タイトル: Irbesartan は実験的自己免疫性神経炎を抑制する /著者: 北薗久雄、萩原渉、井上雅史、紺野晋吾、藤岡俊樹 /掲載誌: 神経治療学 /巻号・発行年等: 31(1):43-49,2014 /
著者
高木 廣文
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

質的研究での主観的なテクスト解釈の問題点について、構造構成主義、ウィトゲンシュタインの言語に関する論考、科学的言語学であるソシュールの一般言語学およびチョムスキーによる普遍文法に基づき検討した。医療関係者、看護関係者及び哲学者等からテクスト解釈の問題点について情報収集し、心脳構造の言語システムの仮説的モデルを考察した。その結果、テクスト解釈の一般的方法をある程度は定式化できることが示唆された。さらに、ヴィエルジュビツカによる言語の概念的原子要素を用いたテクスト解釈、脳科学からのアプローチ、クワインの科学的な言語哲学の理路が、今後のテクスト解釈の科学的研究上で有用ではないかと考えられた。
著者
土岐田 昌和
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では赤外線感知能力を獲得し、暗黒の中で温血動物を捕らえるといったユニークな適応行動を進化させたヘビの一種であるマムシの胚を材料に用いて、その頭部にみられる赤外線受容器官(ピット器官)と赤外線受容能を持つ特殊な神経細胞から構成される赤外線受容神経回路の形成機序を調べる。これにより、動物の適応的な行動が生み出される際に起こる大規模な神経回路の再編成の背景にある分子・細胞基盤の理解をめざす。本研究には、神経回路再編成と生物進化との関連性を探究する進化生物学の新たな研究領域の開拓や医療・工業分野で利用される高精度温度センサーデバイス開発の期待が寄せられる。
著者
道川 武紘 高見 昭憲 諸隈 誠一 山崎 新 清水 厚
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

微小粒子状物質(PM2.5)を中心とする大気汚染物質の周産期影響に関して疫学知見は増えているものの、日本を含めたアジア諸国からの報告は相対的に少ない。本研究では、PM2.5とその成分に注目し、日本の妊婦と胎児への影響を検討した。PM2.5の特定成分曝露が胎児発育の指標である出生時体重や胎盤重量と負の関連性を示すこと、また産科合併症のリスクを高める可能性があることを報告した。またPM2.5を含む黄砂について、黄砂が飛来した1~2日後に産科救急疾患である常位胎盤早期剥離をともなう出産が増加することを観察した。
著者
百瀬 弥寿徳
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は飲酒時の心拍数増加作用について、アセトアルデヒドは心臓洞房結節ペースメーカー細胞を直接活性化し発現するとの仮説を基に、アセトアルデヒドの心拍数増加作用を明らかにすることを目的とした。アセトアルデヒドは交感神経終末よりカテコールアミンの遊離作用を持つことが知られているが、単離細胞標本では作用部位がpost-synaptic membraneに限局されることから、アセトアルデヒドの心拍数への効果が明らかにされると考える。本研究ではウサギ心臓洞房結節ペースメーカー細胞を単離し、アセトアルデヒドが陽性変時作用を有することを確認した。次にパッチクランプ法によりIfチャネル、T-type Caチャネル、Na/Ca exchange currentsを計測してアセトアルデヒドの陽性変時作用機序を検討した。その結果アセトアルデヒドはT-type Caチャネルを活性化することが明らかとなった。またL-type Caチャネルも著明に活性化した。このことは細胞内Ca濃度の増加がアセトアルデヒドによって起こりペースメーカーの発現に促進的に働くことが示唆された。またIfチャネル、Na/Ca exchange currentsに対してアセトアルデヒドは明らかな影響を及ぼさなかった。以上の研究結果は、アセトアルデヒドがこれまで考えられた交感神経終末からのカテコールアミンの遊離作用に起因する心拍数の増加作用以外に、直接洞房結節ペースメーカー細胞に作用し陽性変時作用を起こすことを明らかにした。その機序はT-type Caチャネルの活性化と細胞内Ca濃度の増加に起因するものと結論した。
著者
尾崎 和海
出版者
東邦大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画では、原生代の大気組成(酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4))を制約し、それらを規定する物質循環についての理解を得るための基礎的研究を行う.具体的には、研究代表者が開発を行ってきた海洋物質循環モデル(CANOPS カノープス)を大気化学や陸域風化作用を考慮した地球システムモデルへと高度化し、地質記録を制約条件とした統計的手法を適用することで、原生代と呼ばれる地質時代(約25~6億年前)の地球大気組成の進化を物質循環に基づいた理論的見地から解明することを目指すものである.
著者
廣井 直樹 宮崎 保匡 寺井 秀樹 中島 早苗 斉藤 早代子 金子 幸代 山室 渡 比嘉 眞理子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.341-346, 2005-09-01
参考文献数
11

食欲不振・嘔吐・嘔気を主訴に入院した70歳の女性。心拍数は72回/分・整であり,動悸や手指振戦はみられなかった。入院後も自覚症状は改善せず,徐々に気力の減退が著明となり食事摂取不能・全身の疼痛も出現した。TSH 0.1μIU/ml以下,FT3 20.0pg/ml以上,FT4 12.0ng/dl以上,TRAb 5.6IU/Lでありバセドウ病による無欲性甲状腺機能亢進症と診断した。Thiamazol 30mg/dayにて内服治療を開始したが精神症状の改善はみられず,さらに抗精神病薬を開始するが内服すら不可能な状況となった。高Ca血症を認めたため血清Caの補正を行ったところ,血清Caの低下に伴いうつ症状は改善した。本症例では一般的な甲状腺機能亢進症患者にみられるようなイライラや不眠,振戦,動悸や頻脈などの活動性亢進に伴う種々の症状は認めなかった。高齢者の場合,食欲不振や嘔気・嘔吐,無動,抑うつ傾向など比較的衰弱した印象が前面に出ることがあり,このような病態を無欲性甲状腺機能亢進症と呼ぶ。バセドウ病における精神症状発症の原因はいまだ明らかではないが,高Ca血症が影響しているとの報告もある。今回われわれは高Ca血症がうつ症状の進展に関与したと思われる無欲性甲状腺機能亢進症の1例を経験したので報告する。
著者
李 巍
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ジンチョウゲ科およびトウダイグサ科植物由来のジテルペノイドは、化学構造と生物活性多様性に富んでいる。本研究では、日本産および中国産のジンチョウゲ科またはトウダイグサ科植物を収集、植物抽出物ライブラリーの構築、系統的な化学成分研究により、強力な抗HIV活性をもつ新規ジテルペノイドを多数単離・構造決定した。さらに、天然物からの半合成により化学誘導体を作製し、これらジテルペノイドの抗HIV活性の構造活性相関を明らかにしたと共に、新規抗HIV薬の創製のための構造最適化を行った。
著者
小池 一男 李 巍
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

認知症においては、記憶障害・見当識障害などの中核症状と共に、行動・心理的な周辺症状(BPSD)が患者の生活の質を著しく低下する。本研究では、認知症のBPSDに対する漢方薬の有用性を基礎科学的なアプローチにより明らかにすることを研究目的とした。前年度に引き続き、急性認知症モデルのスコポラミン誘発記憶障害モデルマウスにおいて、五苓散の作用を検討した。五苓散はオープンフィールド試験でスコポラミンによる自発運動量の増加を抑制したことに加え、強制水泳試験では、スコポラミン単独投与群よりもさらに無動時間を短縮させたことから、五苓散は急性認知症モデルにおけるBPSDの陰性症状および陽性症状の両方を改善する可能性が示唆された。作用機序については、五苓散の抗コリン作用を中心に現在、解析を行っている。一方、体内の酸化ストレスの亢進は認知症の発症を促進することが知られている。我々は先行研究において、医療用漢方製剤の抗酸化活性を評価した結果、抗お血作用を有する漢方薬は高い抗酸化活性を示すことを明らかにした。今年度においては、抗お血漢方薬の抗酸化作用の詳細を解析した。その結果、実証に用いられる抗お血剤は抗酸化活性の発現に相関が認められるた。漢方薬の中に、通導散と桃核承気湯は最も強い抗酸化活性を示し、構成生薬の中に、ダイオウとオウゴンは最も抗酸化活性に貢献した。現在、これら漢方薬の抗酸化活性を介した認知症のBPSDに対する効果を検討を行っている。
著者
河原 亜紀子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 = Journal of the Medical Society of Toho University (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.222-230, 2004-07-01
参考文献数
20

目的:伝染性軟属腫の感染経路は接触的感染が推察されてきたが,ウイルス学的に検討された報告はない。今回,自家接種や器物を媒介する伝播経路についてpolymerase chain reaction (PCR)法を用いて検討した。対象および方法:まず,伝染性軟属腫患者20例を対象にしてrestriction fragment length polymorphism-PCR法にてウイルスの型別を行った。次に,nested PCR法を用いて前述の患者における両手と非病変部10箇所から伝染性軟属腫ウイルス(MCV)DNA検出を試み,アトピー性皮膚炎(AD)合併の有無で検出率を比較した。すなわち,AD合併者では掻破のため両手にMCVDNAが高率に付着し,全身の広範囲からMCVDNAが検出されると予想した。さらに,伝染性軟属腫患者を取り囲む環境中にある生活用品や小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からnested PCR法を用いてMCVDNAの検出を試みた。また,従来から感染源であると言われているスイミングスクールで共用されるビート板からもMCVDNAの検出を試みた。結果:全患者の病変部からMCV 1型が検出された。また,AD合併患者とAD非合併患者の両群間で両手および非病変部からの検出率に有意差がなかった。さらに,環境中の生活用品からは患児の手が触れている可能性がある玩具や机などや,小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からもMCVDNAが検出された。また,スイミングスクールで共用されるビート板からMCVDNAが高率に検出された。結論:AD合併者とAD非合併者からのMCVDNA検出率に差がなかったことから,全身へのウイルス散布には手による掻破以外の経路の存在が推察された。また,生活用品を媒介する伝染性軟属腫の伝播経路の存在が示唆された。
著者
工藤 秀康
出版者
東邦大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年開発され、臨床的に利用されているflip angle可変型3D FSEは、比吸収率(SAR)を抑制することを実現した非常に画期的な撮像シークエンスである。2Dシークエンスと異なり、1mm以下の薄いスライス厚での評価が可能で、3次元的な任意の断面での観察することも可能である。ここでは薄層3次元再構成MRIと呼ぶ。こうした臨床利用は撮像パラメーターの調整が難しい面もあり、臨床利用が進んでいなかった。そこで我々は、膝関節を標的とし、3T MRIを用い、flip angle可変型3D FSEの利用を考え、撮像条件の検討を行った。撮像シークエンスは3D FSE SPACEで、1mm以下のスライス厚を考え、0.6mm程度が膝関節MRIにおいて最適なスライス厚との結果を得た。撮像パラメーターを調整し、6分台まで撮像時間を短縮できた。本研究では外側半月板後方支持組織という関節内微細構造の評価が目的であるため、関節内構造を対象に脂肪抑制プロトン密度強調画像とした。膝関節MRIで3D FSEを撮像し、外側半月板自体に異常が確認されなかった症例を対象として外側半月板後方支持組織について3D FSE、それをもとに再構成された再構成像で観察した。外側半月板後方支持組織としてmeniscofemoral ligaments、popliteomeniscal fasciclesを観察した。従来の2D FSEでの描出率よりも3D FSEでのほうがいずれの構造についても描出率は高かった。3D FSEでの観察は屍体膝を用いた過去の報告と一致していた。生体での評価方法としては、従来の2Dシークエンスによる評価方法に比べ、はるかに良い結果となった。さらに外側半月板後角の逸脱した症例ではpopliteomeniscal fasciclesの破綻があることが推測される結果となった。我々が考案した3D FSEを用いた薄層3次元再構成MRIは外側半月板後方支持組織の観察に有用で、外側半月板後角逸脱では外側半月板後方支持組織の破綻が推測される結果となった。
著者
塚田 岳大 後藤 勝
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本申請は、古くからの謎であるウナギの「血清毒」の解明に切り込む。この血清毒は、タンパク性で熱に弱く、摂取や接触により下痢、嘔吐、皮膚炎などの症状を引き起こすことが知られているが、毒の本体(遺伝子)はまだわかっていない。本研究の目的は、ウナギ血清毒を同定・単離し、その毒性を調べることにある。さらに、タンパク質X線結晶構造解析を組み込み、血清毒の立体構造から毒の作用機序を明らかにするとともに、他の生物種における血清毒遺伝子の探索を行い、魚類の血清毒の進化的意義を考察する。
著者
小林 秀行
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ヒトの代替え種での研究を行なうためにまずは、マイクロミニピッグのiPS細胞の誘導を試みたが、完全なiPS細胞は樹立することはできなかった。そのため、生殖細胞への分化の実験は断念した。2016年の年末に電気工事の影響で、-80℃の冷凍庫が故障したため、それまでに冷凍庫内に保管していたTESEおよびmicro-TESEにて採取した精巣組織や、マイクロミニピッグの組織や細胞、その他試薬などすべてを失った。そのため、実験継続はできず、予定していた実験は施行できなかった。