- 著者
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李 泰鎮
邊 英浩
- 出版者
- 都留文科大学
- 雑誌
- 都留文科大學研究紀要 (ISSN:02863774)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, pp.151-174, 2011
本稿の草稿は、第6 回韓日歴史家会議『歴史家はいま、何をいかに語るべきか?』(2006年10月27~29日 東京)のために作成され、その際に日本語訳が鳥海豊・邊英浩によって一旦作成された。その後、訳者は本翻訳用に著者の李泰鎮氏(ソウル大学名誉教授)に韓国語論文の修正加筆をお願いし、2010年9 月に完成原稿を受領し、それを底本として、上記日本語訳を参照しつつ改めて翻訳を行った。なおこの論文の韓国語版は、今現在発表されていない。著者の李泰鎮氏は、近年高宗時代史の一次史料の検討を通じて精力的に論考を発表してきた。その中で、日本が植民地支配を正当化するためにこの時代が悪政であり、日本が善政をもたらしたとする歴史観が作り出され、韓国の近現代史認識が大きく歪曲されてしまったことを明らかにしてきた。この論文では、(1)日本帝国主義による意図的な歪曲を概観し、(2)それを主導した徳富蘇峰の分析に相当量が割かれている。さらに、(3)この歴史認識は解放後もそのまま放置されてきたが、それは解放後の韓国で大統領となった李承晩の歴史認識に大きな原因があったことを解明している。(4)最後に北朝鮮の歴史学界と韓国の学界との関連にも言及している。今までの自身の研究成果を踏まえ、韓国近現代史像を総体的に再検討しようとするスケールの大きな問題提起論文であるため、ここに訳出した。なお訳文中の( )[ ]などの補足は特に断らない限り、原著者によるものである。訳者が補った箇所は〈 〉としたが、その旨を注釈部分などは訳者註などとした箇所もある。引用文献は原則として日本語訳したが、一部原文を並記した。日本語文献との混同を避けるため、韓国での出版物は【韓国語】、北朝鮮のものは【朝鮮語】と記した。