著者
李 潤浩
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_111-613_127, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
22

韓国において最近10年の間,保険詐欺問題は当局と業界のもっともホットなイシューの一つであった。この間,保険詐欺を実証する研究方法と詐欺摘発技術が進展し,法整備を含め保険詐欺防止体制が構築される等,保険制度の多くの資源が保険詐欺防止に割り当てられた。その結果,保険詐欺は公序良俗に反するということへの理解と共感が広がったほか,保険詐欺の摘発率が高まってきた。しかし一方では,保険コストの引き上げや正当な理由なしに支払いを拒否したりするなど,保険制度の社会的効用を引き下げ,保険制度に対する大衆の否定的認識を助長し,保険詐欺を容認する風潮を創り出すという悪循環を繰り返してきた。この事実は,保険経済学と犯罪学の観点からのみ講じられてきた取り組みの限界を露呈していることを示唆する。特に保険詐欺問題のほとんど全部と言っても過言ではない「出来心詐欺」問題に対してはこうしたアプローチは限界を露呈し,例えば,社会心理学など新たなアプローチが要求される状況にきている。