著者
李 禎燮
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

扁桃核は解剖学的に不安行動に関連した脳内の主要な部位であるが、この神経核においてはγ-aminobutyric acid(GABA)が神経伝達物質として重要な働きをしており、また縫線核からのセロトニン入力がこのGABA放出を制御している。我々は、機械的処理によりシナプス前神経終末付着単離神経細胞標本をラット扁桃核より作成し、ニスタチン穿孔パッチ法および薬理学的手法を用いて、自発的GABA作動性微小抑制性シナプス後電流(mIPSCs)を記録した。このGABA作動性mIPSCsの頻度と平均電流量を指標として、セロトニン(5-hydroxytriptamine;5-HT)のシナプス前神経終末およびシナプス後膜への影響を検討した。その結果、セロトニンはシナプス後膜のGABA_A受容体に作用することなく、シナプス前神経終末の5-HT_<1A>受容体に作用してGABA放出を抑制することが明らかとなった。さらに、セロトニンによるGABA放出抑制反応の神経終末内情報伝達経路の固定をおこなった。セロトニンは神経終末部のGTP結合蛋白介在型5-HT_<1A>受容体に作用し、アデニリルサイクレース(adenylyl cyclase;AC)-cAMP系を不活性化してGABA放出抑制を生じていた。この細胞内AC-cAMP系は、シナプス前神経終末に存在するカリウムチャンネル、電位依存性カルシウムチャンネルを介することなく直接的にGABA放出を減少させていた。