著者
李 薈
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1273-1279, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
28

本研究では満鉄の鉄道付属地獲得した20世紀初頭から「奉天工業土地株式会社」の創設した1935年まで鉄西工業区成立の経緯を明らかにした。満州事変前、鉄西工業区は満鉄付属地拡張計画の一部であり、土地取得困難のため、満蒙毛織会社工場のみが設立され、鉄西工業区の起点と言える。満州事変後、満鉄による鉄西工業区の土地買収は失敗した。関東軍と満鉄は三つの方案を順次に作成し、鉄西工業区に関する土地買収方法、経営管理方式を決定した。満鉄は満鉄既買収地以外の土地買収を奉天市政公署に依頼した。法律上の便宜、満鉄主導権と奉天市協力の実現を図るため、満鉄と奉天市政公署共同出資の「奉天工業土地株式会社」が成立した。奉天工業土地株式会社の成立は、鉄西工業区設立時の土地買収問題を解決でき、将来工業区運営にあたる満鉄主導の行政、さらに治外法権撤廃後の満州国奉天市政公署による一元的行政を実現するために条件を作った。