- 著者
-
村上 和弘
- 出版者
- 愛媛大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2004
2006年8月、10月、そして2007年3月の3回にわたり、対馬市にて現地調査および資料収集にあたった。8月の調査は「対馬アリラン祭」を中心に参与観察および関係者への聞き取り調査を行なった。この「対馬アリラン祭」は対馬における日韓交流行事の象徴的存在であるが、それだけに日韓関係の影響を受けやすい。この年は春先にかけて来島韓国人観光客の行動が全国ネットのTVニュースや新聞で取りあげられたこともあり、特に、これら全国規模で流通するマスメディア言説への反応に注目しつつ調査を行った。10月は「対馬アリラン祭」との関係を念頭に、厳原八幡宮例大祭の参与観察を行なった。この両者は同じ地区で開催されており、地区住民にとってはともに屋台や出し物が出る「ハレの日」であることには変わりない。しかし、前者が「日韓友好」のイベントであるのに対し、後者は神社の祭礼であり、その性格付けはかなり異なる。そこで、特に対韓感情および郷土意識に注目しつつ、調査を行った。2007年3月は、昭和20年代を中心に資料収集を行なったほか、当時の貿易に関わる様相について関係者にインタビューを行なった。このほか、昨年度に引き続き、対馬に関連する学術論文・調査報告書の調査収集を行なった。また各種基礎資料、特に交通手段・ルートの変遷に関する資料の調査収集に努めた。この過程で対馬における観光開発関連も収集を行った。これらの文献資料と聞き取りデータとを照合しつつ、地域の全体像を明らかにするための作業を進めた。なお、今年度までの成果の一部は論文として『国際交流センター報』に発表したほか、2本を投稿中である。