著者
広田 修 村上 弾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OCS, 光通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.392, pp.31-36, 2011-01-20
参考文献数
14

近年、量子鍵配送の安全性評価基準が暗号学的に不適切であることが指摘され、当該課題の根本的な再議論が必要となっている。それを具体化するため、前回の発表では、相互情報量に基づく評価では、暗号学的な安全性が全く保証されていない事例を示した。本稿では、原理的な欠陥以前の問題として、日本の量子鍵配送の実験系の安全性分析が本質的な誤りを指摘する。次に安全性評価の原理的な欠陥を提示した最新理論を用いて、量子鍵配送による配送鍵系列を用いたバーナム暗号は、完全秘匿あるいは無条件安全とはほど遠く、通常の数理暗号より安全性が低くなる可能性も否定できないことを再提示する。また、相互情報量基準から発展した別の基準においても、無条件安全性の保証につながらないことを例証し、単一光子による量子鍵配送技術には原理的な欠陥があることを明治する。その上で、これらの困難を克服するために、盗聴者の検出を基本とする量子鍵配送ではなく、KCQ原理と呼ばれる新しい方法論に基づく光通信量子鍵配送: CPPMを提示する。