- 著者
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村主 崇行
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
私の研究計画の主眼は、ソフト的には「物理的自由度、ないし計算資源」の適切な分配の実現、ハード的には価格性能比が良い汎用GPU型並列計算機の利用によりシミュレーション宇宙物理学で独創的な研究を実現することであった。DC2採択までに行った準備的研究の結果、当初の研究計画にあった無衝突粒子加速現象に加えて、当初の計画では、GPU化が困難と考えていた流体計算についても、GPU化できるという目途が立った。そこで、2009年4月から8月にかけては、無衝突加速現象の数値実験を行い、統計データをためる一方で、原始惑星系円盤における氷粒子の表面帯電と電荷分離の素過程の研究を行った。2009年10月にはこれに関する論文[1]を提出し、受理された。つぎに、2009年9月には、並列GPU計算機向けの3次元流体シミュレータを作成し、2009年11月より東京工業大学のTSUBAMEグリッドクラスタ、つづいて長崎大学のDEGIMA GPUクラスターコンピュータにて、本格的な規模のGPUを利用した研究を開始した。宇宙物理学の未解決問題として、星間物質の熱的不安定性によって引き起こされる3次元乱流の研究を選んだ。その結果、前人未到の高解像度の計算を実現し、幅広い応用〓をもつもののGPU化は困難とされていた流体計算がGPU計算に適していることを実証した。この結果を論文にまとめ、投稿している。私は自分自身の研究を進めつつ、共同研究、講習会を主催・参加してGPUのメリットを分かちあってきた。すると、GPUやより将来の計算機を使う上での障害も見えて来、研究計画にあった「アルゴリズムの記述を元に、設計の異なる計算機に対してコードを自動生成・変換する」手法の重要性がますます明確となってきた。そこで、長期的視点に立ったコード生成手法の研究開発を主眼とし、京都大学の次世代研究者育成センターの職員に応募したところ採用され、2010年4月より特定助教として、宇宙物理学および情報学、さらには学問一般を見据えた研究に邁進している。