著者
片山 直樹 村山 恒也 益子 美由希
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.183-193, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
49
被引用文献数
2 6

水田の有機農法がサギ類(ダイサギArdea alba,チュウサギEgretta intermedia,アオサギA. cinerea)にもたらす効果を検証するため,2013-2014年の5-7月に茨城県と栃木県の有機および慣行水田で野外調査を行った.採食行動調査の結果,ドジョウなどの魚類とカエル類が主食だったが,その割合は種ごとに異なっていた;ダイサギ,チュウサギ,アオサギの順に魚類の割合が高かった.また,いずれの種でも有機水田では慣行水田よりも魚類の割合が高くなっていた.一般化線形モデルを用いて解析した結果,有機農法は採食効率(g/min)に正の影響をもっていたが,その傾向はダイサギでのみ明瞭であるようだった.また有機農法は,ダイサギとアオサギの採食個体数に正の影響をもっていた.以上を踏まえ,本研究では有機農法の正の効果はダイサギでは一貫して認められたが,チュウサギとアオサギでは不明瞭であると結論づけた.この理由としては,食物種(魚類やカエル類)ごとの水田農薬の影響の違いや,有機農法の実施面積割合の少なさ(日本全国では総水田面積の約0.28%,本研究の鳥類センサス地点から周囲200 m以内では18-68%)などが考えられた.