著者
村岡 一幸 渡辺 守
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.37-44, 1996

シロチョウ類の資源植物となるイヌガラシの分布構造とその開花数を調査した。イヌガラシは全長707.1mの「塩の道」の両側に列状に分布していた。これらのイヌガラシについて、区画長を変化させMORISITAの<special>Iδ</special>指数によって分布構造を解析したところ、イヌガラシの分布はいくつかの集団をもつ集団分布であることが明らかになった。実際、イヌガラシは4つの大きな集団を形成して分布していた。イヌガラシは集団内で1か所2か所を中心に分布しており、集団内の開花・結実はほぼ同調していた。4つの集団のうち北側の2つは開花期間の中期の集団であり、南側の2つは開花期間の後期の集団であった。生育していたイヌガラシの中からランダムに17株を選び、花序あたりの開花数を連続6日間調査した。この結果花序あたりの平均開花数は1.2花であった。そこで、大きな4つの集団の内の1つの集団について、花序あたりの蕾数と花数、長角果数からこの集団の開花期間と日あたりの開花数を推定した。その結果この集団の開花期間は約2か月であり、そのうち開花数が300個以上の日は17日間続いたと推定できた。さらに、イヌガラシ1花が分泌する花蜜中の糖量を考慮すると、この間は約10mg以上の糖が訪花昆虫に供給されていたといえる。これは、モンシロチョウ約100頭分の一回の吸蜜量に相当した。これらの結果から、イヌガラシはシロチョウ類にとって持続的で豊富な蜜源になっていると思われる。