- 著者
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村松 明穂
松沢 哲郎
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
- 巻号頁・発行日
- pp.84, 2013 (Released:2014-02-14)
ヒトにおける数の概念の獲得の過程において,十進法に代表されるような位取り記数法を学習することは重要である.そこで,今回は,ヒトに最も近縁な種のひとつであるチンパンジー (Pan troglodytes)を対象とし,数の概念の学習に関する研究の第一段階として,アラビア数字の系列 1から19の学習に取り組んだ. 京都大学霊長類研究所で暮らすチンパンジーのうち 7個体は,これまでにアラビア数字の系列 1から 9を学習している.今回はそのうち 6個体を対象としてアラビア数字の系列 1から 19の学習をおこなった.学習においては,5種類の課題を用いた.1) 連続したアラビア数字の系列を用い,最初の刺激 1を固定し,試行ごとに呈示刺激個数が変わる課題,2) 連続したアラビア数字の系列を用い,最初の刺激として任意の数字a,最後の刺激として任意の数字 bを固定し,試行ごとに呈示刺激個数が変わる課題,3) 連続したアラビア数字の系列を用い,最後の刺激 19を固定し,試行ごとに呈示刺激個数が変わる課題,4) 非連続なアラビア数字の刺激を用い,セッション内では刺激呈示個数が固定された課題,5) 課題 4)と同じように刺激を呈示するが,最初の刺激をさわると他の刺激がマスキングされる作業記憶課題,であった. 課題 1)に関しては,難易度ごとの正答率,セッションごとの正答率,呈示刺激個数ごとの正答率について分析した.課題2),3)についても,1)と同様の分析をおこなった.課題4),5)については,正答率にくわえて,反応潜時についての分析をおこなった. 上記 5種の課題をおこなうことにより,チンパンジー 6個体は,アラビア数字の系列 1から 19の知識を獲得した.方法および分析結果についてくわしく報告する.