著者
村田 いづみ
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.27, pp.29-40, 1988

1986年9月22目、中曾根前首相は自民党全国研修会で講演し、その中で、次のような人種差別として米国の言論界から批難をあびる発言を行った。「日本は、これだけの高学歴社会になっておる。相当インテリジェントなソサエティーになってきておる。アメリカなんかよりはるかにそうです、平均点からみたら。アメリカには、黒人とかプエルトリコとかメキシカンとか、そういうのが相当おって、平均的にみたら非常にまだ低い。」 (引用部分は、『中央公論』1986年11月146~162ページによる。) 当時、日本のマスコミは、総じて発言の重大さに気付かず、何紙かの新聞がわずかに報じただけであった。一方、ロイター通信が東京新聞の記事を引用しながら、同発言を米国へ向けて打電したのが契機となり、米国のマスコミ界はこの発言を大きく取りあげた。<BR>本論では、中曾根発言に関する投書を中心として、key words (phrases) による内容分析から抽出される目本人像について考察する。研究対象とした新聞は、日本で馴染の深い米国の代表的新聞、<I>New York Times, Washington Post, International Herald TribuneとLos Angeles Times</I>の4紙である。これらの新聞の、同発言に関する記事の取りあげ方は、表1に示す通りである。