著者
渡辺 和幸
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.16, pp.12-19, 1977

BBCニュースのアナウンサーの話す英語は "BBC English" とも言われ、イギリス英語の標準的なスタイルと言われてきたが、現在ではかつて程のprestigeはないそうである。また地方の方言を話す一般の人々の間には、BBCの英語は、特色のない、個性に欠けた単調な英語と映ることもあるらしい1。しかし、ラジオやテレビの普及で、BBCの用いる英語は、イギリス人の誰からも容易に理解される英語とされている。誰にでも理解されるという点で、ある人には特色のない、個性に欠けた言葉と映るのも仕方のないことであろう。<BR>一般的に言って、ニュースで用いられる英語そのものが、その性格上単調とならざるを得ないのである。講演とか演説とかに比べて速度が早いにもかかわらず、それでいて一語一語かなり明瞭に、しかも感情を入れずに、中立的に伝えるという制約を受けるニュース放送は本来やや単純で、単調な言葉の流れを生み出しがちである。しかしあまりformalで気取ったものでも困るし、それでいてvulgarにならないようにするために、どのような音声的スタイルを維持しているのであろうか。<BR>1969年7月と8月の国内放送 (NottinghamとLondonで録音したもの) 、1973年の国内放送 (Edinburghで友人三宅忠明氏に録音してもらったもの) を中心に、1970年から1976年までの海外放送を補助的資料として、BBCニュースの音声的特徴を吟味してみよう。
著者
村田 いづみ
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.27, pp.29-40, 1988

1986年9月22目、中曾根前首相は自民党全国研修会で講演し、その中で、次のような人種差別として米国の言論界から批難をあびる発言を行った。「日本は、これだけの高学歴社会になっておる。相当インテリジェントなソサエティーになってきておる。アメリカなんかよりはるかにそうです、平均点からみたら。アメリカには、黒人とかプエルトリコとかメキシカンとか、そういうのが相当おって、平均的にみたら非常にまだ低い。」 (引用部分は、『中央公論』1986年11月146~162ページによる。) 当時、日本のマスコミは、総じて発言の重大さに気付かず、何紙かの新聞がわずかに報じただけであった。一方、ロイター通信が東京新聞の記事を引用しながら、同発言を米国へ向けて打電したのが契機となり、米国のマスコミ界はこの発言を大きく取りあげた。<BR>本論では、中曾根発言に関する投書を中心として、key words (phrases) による内容分析から抽出される目本人像について考察する。研究対象とした新聞は、日本で馴染の深い米国の代表的新聞、<I>New York Times, Washington Post, International Herald TribuneとLos Angeles Times</I>の4紙である。これらの新聞の、同発言に関する記事の取りあげ方は、表1に示す通りである。
著者
花木 亨
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.46, pp.49-62, 2007

1960年代以来、フォーク・ロック歌手ボブ・ディランは同時代のアメリカ社会を鋭い感受性と批評精神で捉え、その独創的な詩と音楽の世界によって大衆を魅了し続けてきた。本論では、ディランの半生を描いたマーティン・スコセッシ監督のドキュメンタリー映画『ノー・ディレクション・ホーム』という文化的テクストを読み解くことで、現代アメリカ人たちにとってディランが持つ象徴的意味について考察する。はじめに、ボプ・ディランと『ノー・ディレクション・ホーム』を本考察の対象に選んだ理由を述べる。続いて、この映画に描かれるディラン像を簡単に吟味する。最後に、アメリカ社会に内在する他者としてのディランは、彼の生きる社会を内側から批評し、同時代のアメリカ人たちに自分を見っめなおす契機を与えてきたのではないかという一つの解釈を導き出す。
著者
Rodney A. Dunham
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.32, pp.179-189, 1993-09-01 (Released:2012-11-13)
参考文献数
11

Culture and language are interrelated aspects of a society and represent the society's social reality. As differing societies come into contact, they are exposed to different social realities and need to alter their language to accommodate the new elements. Often this is done by adding loanwords. While this phenomenon is common to all languages, the concern here is with the borrowing of Japanese words by English-language mass media.Although individual English speakers who come into direct contact with a foreign culture are most affected, the mass media have a greater influence over the language as a whole. This is due to the increase in intercultural contact as the mass media creates a global community. The media are caught between the languages in that they must use English and yet report on things that are non-English. Closer observation of the media shows that the Japan-based media tend to use more Japanese words than do the media outside of Japan. In this way, one can see how closely language is tied to social reality and that increased cross-cultural contact changes each person's social reality proportionately. Cross-cultural contact through the mass media changes the language in a similar way.
著者
小南 祐一郎
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.26, pp.165-175, 1987

1978年のユネスコ総会におけるマスメディァ宣言の採択と、その後をうけた1985年の米英両国のユネスコ脱退は、これまで報道の分野で自明の理とされてきた「言論の自由」の概念に、大きな疑問を投げかける出来事であった。時事英語の研究対象が、ひとり語学のみならず、国際報道、特にその内容をも含むとすれば、当然こうした基本的問題にも、より深い関心が寄せられるべきであろう。ここでは、日本であまり報じられていない、新しい国際情報秩序をめぐる国際的な動向を取りあげ、その重要点をいくつか指摘したい。
著者
深山 晶子
出版者
Japan Association for Media English Studies
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.46, pp.1-15, 2007

昨今、ESPが、日本の大学英語教育現場で注目されている。本稿では、これまでのESP研究成果を概観し、最新のESP理論であるジャンル分析に基づいたESP教材作成の実例を提示しながら、日本の大学におけるESP教育の最前線を紹介する。しかる後に、時事英語素材が、ESP授業の活性化に有効であるということも示していく。