著者
村田 大学
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.G1-1-G1-12, 2013

<p>本研究の目的は,米国内部通報制度の実態と問題点を解明することである。米国の内部通報規制は,従来,匿名性や守秘義務の向上など,主に内部通報者の特定を困難にすることで,報復の防止に努めてきた。だが,現在,内部通報件数の増加とは対照的に,内部通報者の5人に1人は報復を経験しており,報復の改善・防止は大きな課題である。</p><p> そこで,本研究は,①内部通報者の潜在的報復者に対する独立性,権力,匿名性と報復の関係,および②通報先の独立性と報復の関係の解明に取り組む。内部通報者は常に様々な組織構成員と利害が対立しやすく,権力も弱いため報復に会いやすい。匿名性の強化は,内部通報者の特定を困難にすることで報復の防止に貢献するが,調査の進展に伴い低下してしまう。また,通報先の独立性が乏しいと,経営者が関与する不正の通報に対する報復の防止は難しい。以上のような限界の克服には,多様な内部通報経路の整備が重要である。</p>