著者
田上 創一 佐藤 裕二 村田 祐二郎 服部 正一 洲之内 廣紀
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-32, 2008 (Released:2008-10-02)
参考文献数
27
被引用文献数
3 1

虚血性腸炎は,一般に保存的に軽快するが,壊死型は不可逆的で緊急手術適応である.原因は,動脈硬化など血管因子と便秘·細菌など腸管因子が関与するとされるが,特定し難い.我々は,救命しえた3例の壊死型虚血性大腸炎を経験し,非閉塞性腸管虚血症(NOMI)との関連を検討した.3例の虚血部位は,いずれも下腸間膜動脈領域に限局し,30, 70, 60時間後に全身状態の改善を待って壊死腸管切除を施行した.術後,3例それぞれ腸管内圧上昇·外傷性ショック·腸内細菌,糖尿病による動脈内膜肥厚·狭小化と便秘·腸内細菌,動脈硬化の進行による狭義の腸管虚血症の悪化と便秘が推定された. 一方,NOMIは,心疾患など高危険群を原因に血管攣縮の結果,再灌流障害から広範に壊死に至る疾患で,診断·治療には血管造影も有効とされる.治療法,生存率,術後Quality of life(QOL)を評価するために,二者の定義を明確にする必要があると思われた.