著者
石毛 美代子 村野 恵美 熊田 政信 新美 成二
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.172-177, 2003-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

音声治療により良好な効果を得た外転型痙攣性発声障害 (外転型SD) の24歳, 女性症例を報告した.本症例では間欠的な無声化などの音声症状が (会話中) ピッチの上昇に伴って出現し, 話声位を下げると軽減した.音声治療で話声位を下げ症状の軽減を図った.G3 (196Hz) とB3 (約247Hz) の2つの目標話声位を設定し, 単語, 短文, および文章での発話練習を行い, さらに, 会話を中心とした使いこなし (carry over) 練習を加えた.治療後の結果は満足すべきものであり, サウンドスペクトログラムの結果も臨床的な印象を裏づけるものであった.6名によるモーラ法での音声評価の結果, 何らかの音声症状があると評価されたモーラ数の平均値は, 治療前は82.5であったが, 治療後は14.5 (54単語, 全176モーラ中) に減少した.話声位を下げることにより音声症状の軽減が得られたことから, 本症例の音声症状には輪状甲状筋の異常が関与している可能性が示唆された.
著者
村野 恵美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.326-331, 2001-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

痙攣性発声障害は原因不明のまれな神経疾患である.多くの場合, 診断は音声の聴覚的評価から容易に可能であるが診断の誤りを避けるためにはいくつかの注意を払わねばならない点がある.本論文は3部からなる.第1部ではSDに関する最初の報告, 定義さらに音声障害の専門家の見解がどのように変化してきたかなど, この疾患に関わる歴史的背景を概説した.第2部では, 適切な診断のために, 専門家にとって最も重要な方法について述べた.音声の聴覚的印象評価はSDの診断における有力な手がかりには違いないが, この他に考慮しなければならない二つの側面がある.一つは, 特定の発声課題時に観察される喉頭の異常運動であり, もう一つは同じ様の音声症状を呈する他の患者との鑑別診断のための詳細な問診である.第3部では鑑別が必要な主な疾患について述べた.
著者
石毛 美代子 村野 恵美 熊田 政信 新美 成二
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.154-159, 2002-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

内転型痙攣性発声障害 (Adductor spasmodic dysphonia: 以下SDと略す) 様症状を呈する9症例に音声訓練を行った.7段階尺度 (0: 正常~6: 最重度) を用いた訓練前後の重症度評価, および治療効果に対する患者の主観的評価の二つにより音声を評価した.9例中4例では満足すべき結果が得られた.4例中2例は, 初期評価において機能性要因が関与していることが疑われた例であったが, 音声訓練後には正常範囲の音声に回復し, 治療結果から最終的に機能性発声障害と診断された.残る2例は初期評価の一環として行った試験的音声訓練において音声症状の軽減が認められた例であったが, 最終的にSDと診断された.以上より, SD様症状を呈する症例に対する音声訓練は鑑別診断上有効であることが示唆された.また, 音声訓練により症状の軽減が得られる症例が存在することから, 試験的音声訓練を試みるべきであると考えられた.