著者
杢 雅利
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.489-498, 2005-07-05

西部北太平洋亜寒帯域および移行域に生息するハダカイワシ科魚類の優占種について日周鉛直移動様式を解析して, 典型的な日周鉛直移動を行なう種, 夜間の分布が表層と中層に分かれる種, 夜間の分布の上限が昼間の分布の上限よりも浅くなる種, 日周鉛直移動を行なわない種の大きく4つのタイプに分けられることを明らかにした。さらに, 生物量で優占するトドハダカ, コヒレハダカおよびセッキハダカの3種について摂餌生態および成熟について多くの新知見を得た。特に, 胃内容物の精緻な解析から, 日周鉛直移動が餌の豊富な表層への摂餌回遊であることを示した。これらの知見は, 夜間の表層での魚類マイクロネクトンによる餌料プランクトン消費量を見積もる実証的パラメーターを示したもので, さらに精度の高い水産資源管理モデルの構築だけではなく, 外洋における生物ポンプの生態学的な理解にも大きく貢献するものである。さらに, トドハダカについては初期成長および産卵生態を明らかにして, 本種が亜寒帯域と移行域の間で摂餌・産卵回遊を行なっていることを示した。