著者
和 吾郎 藤田 真二 東 健作 平賀 洋之
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-26, 2013-07-10 (Released:2015-02-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

2004年8月と2005年9月に物部川上流域で発生した大規模山腹崩壊に伴う濁質の流出特性の変化を明らかにするため,2001~2011年における下流部の濁質負荷量,濁度と流量との関係(C-Q関係),アユ河川定着期(6~9月)の濁水(濁度10度以上)の発生日数の経年変化を調べた。山腹崩壊が発生した2004年以降,物部川の濁質負荷量,出水時の濁度上昇率(C-Q式の傾き),濁度10度以上の日数は山腹崩壊前(2001~2003年)に比べて増加し,その状況は2007年まで認められた。近年の濁質流出の動向について,2010年と2011年の濁質負荷量は,これら2ヶ年より降水量が少なかった2006年の50%以下まで減少した。一方,2009年以降,濁度10度以上の日数は再び増加傾向を示し,2011年では2006年の70日間に次ぐ54日間を記録した。以上のように,物部川の濁質の流出特性は大規模山腹崩壊を契機として高濃度濁水の発生及び濁水長期化が認められる状況に変化した。近年では高濃度濁水の発生は抑制されつつも,アユへの影響が懸念される水準の濁水は依然として高頻度で発生し,濁水長期化が継続している。
著者
東 健作
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.401-410, 2010-09-20 (Released:2012-10-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1

四万十川流域における,⌈上流⌋,⌈中流⌋,⌈下流⌋の3市場での約30年間にわたるアユの入荷量(1977-2009年)を解析することによって,当河川におけるアユ入荷量の動向と近年の特徴を明らかにした。アユの入荷量変動は流域全体で概ね同調しており,特に2003年以降の不漁が顕著であった。その一方,⌈中流⌋で年毎の変動が大きく,⌈下流⌋で入荷量の減少度合が大きいといった市場間の違いもみられ,遡上量と産卵親魚の双方が減少したことによって資源が縮小している現状が示唆された。当資料の解析から,10月の漁獲と同月の少雨が翌年の入荷量に対して負の相関を示すことが分かった。それゆえ,アユ資源の持続的利用のためには,降雨条件を考慮に入れながら産卵初期の親魚を保護することが重要であることを指摘した。