著者
白井 睦訓 三浦 公志郎 東 慶直
出版者
山口大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

肺炎クラミジアの冠状動脈硬化部における感染状況を調べたところ、軽度、高度狭心症計50人の冠動脈硬化部の平滑筋細胞組織の100%で動脈壁平滑筋細胞に肺炎クラミジアの高密度感染を検出し、局所炎症の惹起に関与していた。肺炎クラミジアの約100遺伝子は真核生物の遺伝子に類似する。これら主要な病原因子と相互作用するヒト大動脈遺伝子を2ハイブリッド法を用いてcDNAライブラリーから検出した。肺炎クラミジアset遺伝子(ヒトクロマチン関連因子ホモローグ)やmpg1遺伝子は肺炎クラミジア自身か宿主のクロマチン構造に関連すると考えられ、ある種の細胞外マトリックス蛋白質(大動脈壁平滑筋層で弾性を制御している細胞外マトリックスタンパクファミリーフィブリンのEGF様Ca結合ドメイが相互作用ドメインであった)との相互作用が同定された(クラミジア感染患部で、大動脈弾性繊維の断裂病変形成に関与?)。この肺炎クラミジアのキネシン/ミオシン類似因子であるKhc蛋白質や封入体膜構成蛋白質であるIncA2をベイトにすると、それぞれミトコンドリア膜に局在する蛋白質ATP6,NADH dehydrogenaseとamine oxidaseが同定された(大動脈平滑筋細胞の増殖や脱分化制御に関与?)。この封入体膜遺伝子をHeLa細胞に導入・発現させたところ、発現タンパク質の局在はミトコンドリアに一致しており同膜電位を変化させて透過性に関与することがわかった。同遺伝子導入細胞はアポトーシスを起こしやすいことを解明した。これら相互作用因子の結合ドメインも解明した。それらの相互作用による宿主細胞変化をさらに解析中である。その他約80の全く新しい肺炎クラミジア菌?宿主間タンパク相互作用を検出している。50種程度の薬物スクリーニングの結果、アスピリンなど数種の薬物が肺炎クラミジア感染排除に働くことも判明した。肺炎クラミジア近縁種のクラミジア・フェリスの全ゲノム構造を決定したので両菌遺伝子の比較解析により動脈硬化関連因子探索の手がかりとなることが期待される。ヒト正常大動脈由来平滑筋細胞とHEp2細胞(対照)それぞれに肺炎クラミジア、クラミジア・フェリス菌を感染させて、ヒト3万遺伝子発現をマイクロアレイ解析して動脈硬化・心筋梗塞関連遺伝子データベースと比較することにより、肺炎クラミジア感染大動脈由来平滑筋にユニークな動脈硬化症関連遺伝子16コと新たな動脈硬化関連候補遺伝子合計224個を検出した)。