著者
山本 亜衣 新冨 瑞生 元井 彩加 三浦 公志郎 巴 美樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.133-144, 2019-10-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【目的】Dietary Approach to Stop Hypertension(DASH)食弁当を1日1食または2食摂取させ,血圧改善への影響を検討した。栄養素等摂取量,血液生化学検査,血球検査結果を解析し,血圧改善効果の要因を検証するためのパイロット研究とした。【方法】対照群を設定しない介入研究で,対象は九州女子大学関連施設の教職員,ボランティア31名を解析対象とした。研究期間である平成26年9月~11月の12週間のうち4週間の摂取期はDASH食弁当(マルハニチロ(株))を1日1食または2食摂取させた。試験項目は身体計測,血圧測定,食事調査,血液生化学検査,血球検査であり,九州女子大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果・考察】DASH食弁当摂取期に血圧が低下する傾向はあるものの,統計学的な有意差は見られなかった。また,血中カリウム濃度の上昇がみられた。1食群,2食群ともに脂質,飽和脂肪酸摂取量は摂取期のみ「日本人の食事摂取基準(2015年版)」におけるエネルギー産生栄養素バランスの目標量の範囲内となった。両群ともにカリウム,カルシウム,マグネシウムは摂取期に増加し,2食群のみカリウムは目標量,カルシウム,マグネシウムは推奨量を満たした。【結論】DASH食弁当の血圧改善効果を検証するためには,十分なサンプルサイズで検討する必要がある。
著者
白井 睦訓 三浦 公志郎 東 慶直
出版者
山口大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

肺炎クラミジアの冠状動脈硬化部における感染状況を調べたところ、軽度、高度狭心症計50人の冠動脈硬化部の平滑筋細胞組織の100%で動脈壁平滑筋細胞に肺炎クラミジアの高密度感染を検出し、局所炎症の惹起に関与していた。肺炎クラミジアの約100遺伝子は真核生物の遺伝子に類似する。これら主要な病原因子と相互作用するヒト大動脈遺伝子を2ハイブリッド法を用いてcDNAライブラリーから検出した。肺炎クラミジアset遺伝子(ヒトクロマチン関連因子ホモローグ)やmpg1遺伝子は肺炎クラミジア自身か宿主のクロマチン構造に関連すると考えられ、ある種の細胞外マトリックス蛋白質(大動脈壁平滑筋層で弾性を制御している細胞外マトリックスタンパクファミリーフィブリンのEGF様Ca結合ドメイが相互作用ドメインであった)との相互作用が同定された(クラミジア感染患部で、大動脈弾性繊維の断裂病変形成に関与?)。この肺炎クラミジアのキネシン/ミオシン類似因子であるKhc蛋白質や封入体膜構成蛋白質であるIncA2をベイトにすると、それぞれミトコンドリア膜に局在する蛋白質ATP6,NADH dehydrogenaseとamine oxidaseが同定された(大動脈平滑筋細胞の増殖や脱分化制御に関与?)。この封入体膜遺伝子をHeLa細胞に導入・発現させたところ、発現タンパク質の局在はミトコンドリアに一致しており同膜電位を変化させて透過性に関与することがわかった。同遺伝子導入細胞はアポトーシスを起こしやすいことを解明した。これら相互作用因子の結合ドメインも解明した。それらの相互作用による宿主細胞変化をさらに解析中である。その他約80の全く新しい肺炎クラミジア菌?宿主間タンパク相互作用を検出している。50種程度の薬物スクリーニングの結果、アスピリンなど数種の薬物が肺炎クラミジア感染排除に働くことも判明した。肺炎クラミジア近縁種のクラミジア・フェリスの全ゲノム構造を決定したので両菌遺伝子の比較解析により動脈硬化関連因子探索の手がかりとなることが期待される。ヒト正常大動脈由来平滑筋細胞とHEp2細胞(対照)それぞれに肺炎クラミジア、クラミジア・フェリス菌を感染させて、ヒト3万遺伝子発現をマイクロアレイ解析して動脈硬化・心筋梗塞関連遺伝子データベースと比較することにより、肺炎クラミジア感染大動脈由来平滑筋にユニークな動脈硬化症関連遺伝子16コと新たな動脈硬化関連候補遺伝子合計224個を検出した)。
著者
白井 睦訓 三浦 公志郎
出版者
山口大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

アモキシリン(AMOX)耐性ピロリ菌の耐性機構を世界ではじめて詳細に解明できた。すなわち、アモキシリンをアビジンラベルして菌体成分中のアモキシリンと結合する分子を同定した結果、そのアモキシリン耐性は、アミノ酸変異を起こしたペニシリン結合タンパク1(PBP1)によって引き起されるごとが分かった。世界でAMOX耐性ピロリ菌の分離は極めて少数で、日本全国をネットする大学病院と主要病院に呼びかけ40以上の施設の協力を得てAMOX耐性ピロリ菌研究のコンソーシアムを組織した結果、全国から数十の耐性株候補が山口大学に集積された。我々はこれらの菌株のAMOX最小増殖阻止濃度(MIC)などの薬剤耐性検定やペニシリン結合蛋白群のうち既に解明している耐性原因遺伝子でAMOX親和結合の主体であるPBP1遺伝子の塩基配列全長を解読して、耐性特異的変異アミノ酸を確定し、さらに同耐性遺伝子を感受性株に導入後耐性への形質転換を確認した。その結果、これまで少数の耐性株の解析に基づいて判明していた変異箇所をより限定化でき、PCR配列解析と感受性株の耐性転換による耐性診断率の上昇、診断の簡便化と迅速化に対応できる成果につながった。開発した診断法の対象患者は背景に示したように膨大である。我々は既にこの診断対象となる遺伝子配列とそれを利用した診断法の考案の特許を出願中で、優位性は確保されている。この耐性診断方法に関連した製品は皆無で、本成果は新製品や新技術に直結し、商品化された場合の優位性は極めて高い。既出の特許内容を追加し、協力企業と商品化を検討中である。また、耐性遺伝子産物を利用した治療薬の合成とスクリーニングも実施し、薬剤耐性菌に感受性のアモキシリン誘導体も数種類探索し得た。