- 著者
-
東 祥代
小山内 康夫
及川 哲史
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.D0472, 2006
【目的】<BR>急性期病院における廃用症候群患者の実態を調査し、移動能力再獲得に影響を与える因子について検討した。<BR>【方法】<BR>対象は、2004年9月から2005年8月に当院入院され、廃用症候群の診断名でリハ処方された患者102名中、死亡例23例・中止例1例を除く78名(男性43名、女性35名)。<BR>診療録より、年齢、痴呆性老人の日常生活自立度判定基準(以下、精神機能)、入院からリハ開始までの日数(以下、リハ開始までの日数)、入院から離床までの日数(以下、臥床日数)、在院日数、転帰先、移動能力(入院前・退院時)について、後方視的に調査した。移動能力については、FIMの移動項目の点数(1~7)を用いた。統計学的解析は、移動能力再獲得に影響を与える因子の分析として、1)年齢、2)精神機能低下(ランク2以下)の有無、3)リハ開始日数、4)臥床日数、5)入院前移動能力を説明変数とし、ステップワイズ重回帰分析を行った。<BR>【結果】<BR>平均年齢は79.4歳。精神機能低下例は、39.7%であった。リハ開始までの平均日数は、9.8±8.7日、平均臥床日数は、11.4±15.1日、平均在院日数は35.7±23.8日であった。転帰先は、自宅が56.4%、転院・施設が43.6%であった。移動能力が、退院時に入院前レベルに回復した例は67.1%だった。<BR>入院前移動能力獲得に寄与する因子として精神機能低下の有無(標準回帰係数=0.400)、入院前移動能力(標準回帰係数=0.365)、臥床日数(標準回帰係数=0.202)の順に採用された。決定係数R<SUP>2</SUP>=16.6%であった。<BR>【考察】<BR>矢部らは、早期離床を阻害する因子として、高齢、運動障害、痴呆、不穏の出現をあげている。本研究からも高齢者が多く、精神機能低下例も4割近くを占めていたことから、これらは廃用症候群に至りやすい因子であると推察された。また、移動能力再獲得例の割合は、門らの内科・外科病棟患者を対象にした研究の82.6%と比較すると、低い値であった。当院では、在院日数短縮の方針のため、病前レベルに到達しなくとも、環境調整により早期に在宅復帰を目指した事が、要因として考えられた。<BR>張替らの終了時移動能力を目的変数として重回帰分析を行った研究では、精神機能、病前移動能力が影響を与えていた。移動能力再獲得を目的変数とした本研究でも、同様の因子に加え、臥床日数が影響したことから、精神機能低下例や、入院前移動能力低下例について、早期離床を進め、廃用の進行を予防していく必要があると考えられた。しかし、決定係数が16.7%と低い値であったことから、今回評価出来なかった因子が関わっている可能性が考えられた。<BR>【まとめ】<BR>廃用症候群患者のリハビリテーションにおいて、「精神機能低下」、「入院前移動能力」の影響を考慮し、早期離床を促すことが重要である。<BR>