著者
山本 昇吾 藤東 祥子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-21, 2015 (Released:2015-06-29)
参考文献数
20

【目的】原発開放隅角緑内障に対して,標準的治療を基本にして長期にわたり漢方治療を行った症例を呈示し,緑内障治療における漢方の意義について考察する。【症例】症例1は,男性で初診時17歳の原発開放隅角緑内障症例である。34年間で3度手術を行ったが,漢方治療を継続しながら経過を観察し得た症例である。症例2は,女性で初診時56歳,初診より約30年前に原発開放隅角緑内障と診断されたが,その後希望により漢方治療を19年間継続している症例である。いずれも失明状態になることが危惧されていたが,漢方治療を継続することにより視機能を維持し,眼圧もコントロールすることができた。症例3は,女性で初診時23歳,漢方内服中に眼圧は正常範囲に低下し,内服中止により眼圧上昇を示した。【考察】原発開放隅角緑内障における眼圧上昇に対して有効な特定の処方名は挙げられないが,少しでも有効な漢方方剤はある。また,漢方を継続的に服用することは視機能維持にも有効である可能性がある。【結語】漢方薬は原発開放隅角緑内障の眼圧低下及び視機能維持の補助的治療に用いて有効である。
著者
山本 昇吾 藤東 祥子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.347-358, 2011 (Released:2011-09-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

再発性眼疾患に対して再発防止の目的で漢方治療を行った症例を呈示し,漢方治療の有効性について考察した。眼科漢方30年の経験の中で,再発予防を目的として漢方治療を施した症例は27例あった。疾患の内訳は,再発性麦粒腫,再発性多発性霰粒腫,再発性結膜下出血,再発性糸状角膜炎,再発性角膜ヘルペス,Posner-Schlossman Syndrome,中心性漿液性脈絡網膜症,再発性硝子体出血であったが,随証治療の原則に従い,継続的に漢方治療を施したところ27例中12例で3年以上にわたって再発を認めなかった。再発性眼疾患に対する再発防止は一般に困難と考えられているが,これらの結果は再発性眼疾患に対する漢方治療の有効性を示唆するもので,漢方は今後も試みるべき治療であると考える。また,今回の検討から,再発性疾患に対して治療を施した場合にその治療が有効であると言えるまでの年数に関する一つの基準として3年~4年が妥当ではないかと思われた。
著者
山本 昇吾 藤東 祥子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.347-358, 2011-05-20
参考文献数
28

再発性眼疾患に対して再発防止の目的で漢方治療を行った症例を呈示し,漢方治療の有効性について考察した。<br>眼科漢方30年の経験の中で,再発予防を目的として漢方治療を施した症例は27例あった。疾患の内訳は,再発性麦粒腫,再発性多発性霰粒腫,再発性結膜下出血,再発性糸状角膜炎,再発性角膜ヘルペス,Posner-Schlossman Syndrome,中心性漿液性脈絡網膜症,再発性硝子体出血であったが,随証治療の原則に従い,継続的に漢方治療を施したところ27例中12例で3年以上にわたって再発を認めなかった。<br>再発性眼疾患に対する再発防止は一般に困難と考えられているが,これらの結果は再発性眼疾患に対する漢方治療の有効性を示唆するもので,漢方は今後も試みるべき治療であると考える。また,今回の検討から,再発性疾患に対して治療を施した場合にその治療が有効であると言えるまでの年数に関する一つの基準として3年~4年が妥当ではないかと思われた。
著者
東 祥子 永松 麻紀 池田 彩 宮崎 明子 小澤 健太郎 田所 丈嗣
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.83-87, 2013 (Released:2013-08-02)
参考文献数
10

49歳,女性。1999年に口腔内のびらんが出現し,四肢体幹にも拡大し,生検で尋常性天疱瘡と診断した。ステロイド内服では病勢を抑えることが困難であったため,ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス,血漿交換,アザチオプリンなどで加療した。その後病勢は安定し,プレドニゾロンを漸減し,抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体ともに陰性化し経過は良好であった。2009年6月頃から顔面および下肢に小型のびらんを伴う紅斑が出現し,全身に拡大した。生検で有棘層最上部から顆粒層にかけて表皮内水疱と棘融解像を認め,抗デスモグレイン1抗体のみの上昇を認めた。尋常性天疱瘡から落葉状天疱瘡への移行例と考えた。(皮膚の科学,12: 83-87, 2013)