著者
桃田 幸弘 高野 栄之 可児 耕一 松本 文博 茂木 勝美 青田 桂子 山村 佳子 大守 真由子 東 雅之
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-35, 2012 (Released:2013-07-26)
参考文献数
42

目的:舌痛の器質的要因をスクリーニングする系統的診断システムを提案し,本法によって診断された舌痛関連疾患を検討する.方法:2007年1月から2009年12月までに舌痛などの舌症状を主訴としてで徳島大学病院歯科口腔外科を受診した患者104名(男性12名,女性92名,平均68歳2か月)を臨床統計学的に検討した.病歴聴取,口腔内・外診査,パノラマエックス線検査,血液検査,培養検査および唾液分泌検査を行った.局所麻酔薬と非ステロイド性抗炎症薬の効果も確認した.結果:原因疾患は口腔カンジダ症,口腔乾燥症,舌炎,舌痛症などであった.器質的変化や自覚症状の乏しい口腔カンジダ症や口腔乾燥症が認められた.舌痛症の多くは舌尖に発現し,食餌性刺激による誘発痛や圧痛が認められないものが多く,局所麻酔薬や非ステロイド系抗炎症薬の効果も乏しかった.舌痛症における味覚異常や低亜鉛血症の発現頻度は低く,手掌部発汗が高頻度に認められた.結論:培養検査や唾液分泌検査が不可欠であり,器質的変化や自覚症状の乏しい口腔カンジダ症や口腔乾燥症は舌痛症と診断される可能性があった.舌尖部疼痛を有し,食餌性刺激による誘発痛や圧痛がないことが舌痛症特異的な所見と考えられ,その病態に舌粘膜障害の関与は否定的であった.味覚障害や低亜鉛血症は舌痛症特異的な所見ではなかった.手掌部発汗は舌痛症特異的な所見と考えられ,その病態に自律神経異常の関与が示唆された.
著者
桃田 幸弘 高野 栄之 可児 耕一 松本 文博 青田 桂子 山ノ井 朋子 高瀬 奈緒 宮本 由貴 小野 信二 東 雅之
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.53-59, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
37

口腔顎顔面領域に発症する神経障害性疼痛は従来の薬物療法(非ステロイド性抗炎症薬,いわゆるNSAIDs)が奏効し難く,対応に苦慮する.1990年代,米国において新しい疾患概念として口腔顔面痛が提唱され,本邦においても,その対策は喫緊の課題とされる.近年,プレガバリン・トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(T/A錠)・加工附子末などが用いられ,その経験が蓄積されつつある.今般,われわれはプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用が奏効した口腔顔面痛の3例を経験したので報告する.患者は男性1名,女性2名,年齢50~81歳(平均65歳)であった.全例に対してプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤を併用し,痛みは緩解もしくは消失した.特記すべき有害事象は認められなかった.口腔顔面痛に対するプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用の有用性が示唆された.