著者
東村 康文
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-106, 1988-05-16 (Released:2010-04-30)
参考文献数
24

宝暦飢饉 (1755年) とその前後における夏期の気候の復元を行なった。古日記中の天候記録の広域的な分布を使って天候の推移を調べるとともに, 現在の観測資料を用いて導き出した天気分布型の出現数と気温および気圧配置型との関係を宝暦期に適用して気温および気圧配置型の推定を行なった。その結果, 以下の諸点が明らかとなった。1) 解析を行なった1751-60年は, 1755年に代表されるような冷夏・長雨という特定の気候状態だけが卓越していたわけではない。2) 1755年7月は関東以南が降雨域におおわれ, 東北地方東岸は「やませ」が吹き, 第1種型の冷夏と考えられる。3) 1755年7月の盛岡, 石巻における平均気温は1951-80年の平均気温よりも約3℃低温であった。4) 気圧配置出現率を算定したところ, 1755年7月は夏型が少なく停滞性の前線が日本列島の南岸にかかる型が多く, また, 同年8月は停滞性の前線が東北地方を横断する型が多かった。