- 著者
-
山崎 裕司
松下 恵子
- 出版者
- 学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
- 雑誌
- 高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.29-33, 2008-03-31 (Released:2018-09-06)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
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1
本研究では,行動分析学の技法を用いた車椅子キャスター上げの指導方法を考案し,その効果について口頭指示による試行錯誤型の操作練習と比較検討した.対象は,キャスター上げ経験の無い健常女性13名で,無作為に2群に分類された.A群(7名)には,最初に試行錯誤型のコーチングが行われ,次に日を変えて行動分析的コーチングが行われた.B群(6名)では,A群とは逆の順でコーチングが行われた.目標行動は,1分以内に標準型車椅子のキャスターを上げ,その状態を30秒間保持することとした.行動分析的コーチングは,シェイピングや連鎖化,身体的ガイド,プロンプト・フェイディングなどの技法を取り入れて形成された.課題の難易度が段階的に設定され,練習中の失敗ができるだけ少なくなるように配慮された.試行錯誤型のコーチングでは,キャスター上げ,およびその保持の方法が口頭で教示された.いずれも練習時間は30分とした.行動分析的コーチング後,13名全員が30秒以上のキャスター上げに成功した.試行錯誤型コーチングを一日目に導入した7名中,30秒以上のキャスター上げができた症例はなかった.以上のことから,シェイピングや身体的ガイド,プロンプト・フェイディングを用いたキャスター上げ練習は,口頭指示のみによる試行錯誤型練習に比較してより有効なものと考えられた.