著者
依光 朋子 山﨑 裕司 萩野 智美 酒井 寿美 平賀 康嗣 稲田 勤 川上 佳久 西野 愛
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.23-25, 2012

図書館利用者数,貸出冊数を増加させる目的でポイントカードを導入し,その効果について検討した. 対象は平成22年度本学院在学生520名,平成23年度本学院在学生523名である. 平成23年10月から,図書館利用者にポイントカードを配布した.ポイントは,図書の貸出機会,返却機会,国家試験問題への挑戦について2ポイント,文献相互貸借申込について6ポイントが付与された.合計10ポイントで,借用可能な図書数を1冊増加,あるいは漫画本3冊の貸出という特典を準備した.さらに30ポイントで,漫画本10冊の貸出という特典を付与した.平成23年10月から平成24年2月までの期間における来館者数,貸出図書冊数を平成22年度の同時期と比較した. 平成22年度と23年度を比較すると,11月13.1%,12月11.4%,1月11.8%,2月39.5%の有意な増加を認めた.しかし,貸出冊数には,有意な変化を認めなかった. ポイントカードの導入は,利用者数を増加させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31 (Released:2018-08-29)
参考文献数
9

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーター(COMBI社製;POWERMAX-VⅡ)による30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.
著者
明崎 禎輝 山﨑 裕司 野村 卓生 吉本 好延 吉村 晋 濱岡 克伺 中田 裕士
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2007-03-31 (Released:2018-09-05)
参考文献数
12

脳血管障害片麻痺患者79名を対象に,歩行自立のために必要な麻痺側下肢荷重率について検討した.下肢荷重率の測定には市販用体重計を用い,5秒間安定した保持が可能であった荷重量を体重で除し,その値を下肢荷重率とした.単変量解析では,年齢,麻痺側下肢筋力,下肢Brunnstrom stage,麻痺側下肢荷重率,深部感覚障害の有無において自立群と介助群間で有意差を認めた.ロジスティック解析の結果,麻痺側下肢荷重率のみが自立群に関係する有意な要因であった.Receiver Operating Characteristic曲線による曲線下面積を求めた結果,麻痺側下肢荷重率は自立群を有意に判別可能な評価方法であった.麻痺側下肢荷重率71.0%をカットオフ値とした場合,感度,正診率,陽性適中率のいずれも高い精度で自立群を判別可能であった.脳血管障害片麻痺患者における麻痺側下肢荷重率は,歩行自立度を予測する上で有用な指標と考えられた.
著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.
著者
多田 実加 大森 圭貢 佐々木 祥太郎 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎 宮﨑 登美子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-74, 2018-03-30 (Released:2019-08-07)
参考文献数
47

本邦におけるHand-held Dynamometer(以下,HHD) を用いた膝伸展筋力測定方法を文献検証した.医中誌のデータベースを用い,「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」のキーワードで文献検索を行った.抽出された文献のうち膝伸展筋力測定方法に関して再現性と妥当性が検討された32文献を対象とした.運動器疾患を有さない対象者において再現性を検討した報告は16文献あり,その内15文献はHHDにベルト固定を併用していた.端座位でベルト固定を併用した測定における級内相関係数は,検者内,検者間ともに1つの論文を除きすべて0.9を超えていた.一方,筋力水準が高い場合,ベルト固定なし条件での再現性は不良であった.同時的妥当性を検討した8文献では,7文献においてベルト固定が行われていた.いずれも等速性筋力測定装置などによって得られた値との間に強い相関関係を認めていた(0.73~0.98).運動器疾患を有する対象者で検討した8文献では,4文献においてベルト固定が併用されており,検者内級内相関係数は0.9を超えていた.ベルト固定を併用していない1文献でも,級内相関係数は0.9を超えていたが,測定された筋力は極めて低値であった.運動器疾患のない対象者においては,端座位でのベルト固定を併用したHHDによる測定方法が選択されるべきである.
著者
岩本 さき 笠井 新一郎 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 塩見 将志 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-32, 2001-03-31 (Released:2018-08-29)
参考文献数
8
被引用文献数
2

平成11年度より,香川県坂出市では,1歳6ヶ月児健診で未通過だった子どもの発達状況のフォローを一つの目的として,保健婦と言語聴覚士による2歳児を対象とした発達相談(以下,2歳児相談)を行っている.しかし,実施に際して,評価時間の短さや,子どもの語彙発達を評価する指標がない点が問題として挙げられた.そこで,2歳児相談時にスクリーニングとして使用できる語彙チェックリストを作成することを目的とし,2歳児の語彙発達の現状を明らかにするための調査研究を行った.調査の対象者は,香川県坂出市内の全保育所(12施設)に所属する1歳11ヶ月から2歳11ヶ月の子どもの保護者であり,161名であった.調査においては,名詞・代名詞・抽象語・動詞・形容詞・形容動詞・副詞・感動詞を含む,全語彙数452個のチェックリストを,調査用紙として用いた.分析を加えた結果,2歳児相談でスクリーニングの指標となる平均語彙数は,2歳0ヶ月児で183.9語,2歳6ヶ月児で288.7語であった.また,2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月にかけて350語を超えており,グラフはほぼ横這い状態を示した.これらの結果から,今回用いたチェックリストの適用範囲は2歳9ヶ月以前と考察された.
著者
山﨑 裕司 片岡 千春 大倉 三洋 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-66, 2009-03-31 (Released:2018-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2

固定用ベルトを併用したHand Held Dynamometer(以下,HHD)による新たな股関節外転筋力(以下,股外転筋力)測定方法を考案し,その再現性について検討した.<研究1:検者内再現性>健常者20名の両下肢40脚を対象とした.固定用ベルトを使用したHHDにはアニマ社製徒手筋力測定機器μTasMF-01を用いた.固定用ベルトを使用しないHHDには酒井医療社製徒手筋力センサEG-230及び220を使用した.股外転筋力値は1日目,2日目とも固定用ベルト不使用下(23.1kgf,23.0kgf)に比較し,固定用ベルト使用下(28.2kgf,28.7kgf)において有意に高値を示した(p<0.01).ベルト不使用下,使用下での級内相関係数(以下,ICC)は,それぞれ0.917,0.953であった.両測定方法間での筋力差とベルト使用下における筋力値の間には,有意な相関(r=0.783,p<0.01)を認め,筋力値が大きいほど測定方法間での差が大きくなった.<研究2: 検者間再現性>健常成人17名の両下肢34脚を対象とした.体格の異なる2名の検者によって,研究1と同じ固定用ベルトを使用したHHDを用いて股外転筋力の測定を実施した.筋力値は検者A,Bの順に31.1kgf,32.8kgfであり,検者間に有意差は認めなかった.検者間ICCは0.915であった.以上の結果から,今回の固定用ベルトを使用した股外転筋力測定方法は良好な検者内,検者間再現性を有することが明らかとなった.一方,固定用ベルトを使用しない方法は,筋力値の大きな対象群において測定値の妥当性に問題があるものと考えられた.
著者
山﨑 裕司 遠藤 晃祥
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-10, 2017-03-31 (Released:2019-07-10)
参考文献数
2
被引用文献数
7

認知症患者の日常生活動作障害に対する行動分析学的介入について紹介した.応用行動分析学では動作障害の原因を,認知機能や身体機能の問題だけでなく,知識の問題,技術の問題,動機づけの問題から分析していく.知識の問題に対して,間違った手順を修正する口頭指示は無効であった.知識の教示とフェイディングによる介入の有効性が示された.技術の問題に対する介入では,逆方向連鎖化や段階的な難易度設定,プロンプト・フェイディングなどの技法を用いた介入の有効性が報告されていた.動機づけの問題に対しては,強化刺激の整備によって適切な行動を増加させ得ることが示された.さらに,言語指示に従えない重症例に対する介入が4本報告されていた.問題行動に対する介入では,不適切な行動を消去し,それに拮抗する適切な行動に強化刺激を与える介入が実施されていた.多数の先行研究は,認知症を有する対象者に適切な行動を学習させ得ることを示した.応用行動分析学的介入は,認知症患者の日常生活動作能力を改善させるであろう.
著者
山崎 裕司 松下 恵子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-33, 2008-03-31 (Released:2018-09-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では,行動分析学の技法を用いた車椅子キャスター上げの指導方法を考案し,その効果について口頭指示による試行錯誤型の操作練習と比較検討した.対象は,キャスター上げ経験の無い健常女性13名で,無作為に2群に分類された.A群(7名)には,最初に試行錯誤型のコーチングが行われ,次に日を変えて行動分析的コーチングが行われた.B群(6名)では,A群とは逆の順でコーチングが行われた.目標行動は,1分以内に標準型車椅子のキャスターを上げ,その状態を30秒間保持することとした.行動分析的コーチングは,シェイピングや連鎖化,身体的ガイド,プロンプト・フェイディングなどの技法を取り入れて形成された.課題の難易度が段階的に設定され,練習中の失敗ができるだけ少なくなるように配慮された.試行錯誤型のコーチングでは,キャスター上げ,およびその保持の方法が口頭で教示された.いずれも練習時間は30分とした.行動分析的コーチング後,13名全員が30秒以上のキャスター上げに成功した.試行錯誤型コーチングを一日目に導入した7名中,30秒以上のキャスター上げができた症例はなかった.以上のことから,シェイピングや身体的ガイド,プロンプト・フェイディングを用いたキャスター上げ練習は,口頭指示のみによる試行錯誤型練習に比較してより有効なものと考えられた.
著者
平賀 康嗣 栗山 裕司 宮﨑 登美子 柏 智之 片山 訓博 重島 晃史 稲岡 忠勝 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-41, 2019-03-30 (Released:2019-09-19)
参考文献数
6

本研究では,健常者のハムストリングスに対するストレッチを継続的に実施し,持続的なストレッチ効果が現れる治療期間について検討した.対象は,健常者14名(男性7名,女性7名)である.介入前右膝窩角は,137.7±12.1度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の右膝窩角は,それぞれ144.4±13.0度,152.7±10.5度,155.6±7.7度,162.0±6.2度であった.2 週目以降,開始時と比較し膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).介入前左膝窩角は,138.8±12.4度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の左膝窩角は,それぞれ143.9±12.4度,151.3±7.8度,154.3±8.2度,160.7±6.1度であった.2週目以降,膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).明確な膝窩角の改善は, 2 週目以降と説明することが妥当なものと考えられた.
著者
塩見 将志 笠井 新一郎 岩本 さき 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.49-54, 2001-03-31 (Released:2018-08-29)
参考文献数
9

今回,私たちは,2歳児相談において,言語発達を正確に評価し,言語発達障害を有する子どもや「気になる子」を早期発見・早期療育するための語彙チェックリストの作成を目的に保育所に通う2歳前後の幼児を対象とした表出語彙に関する事前調査を実施した.なお,本稿では,その中でも特に動詞に焦点を当てて検討を加えた.調査で用いたチェックリストの項目は,大久保(1984)が作成した2歳児の語彙リストと三省堂「こどもことば絵じてん」を参考に作成した.本稿で取り扱う動詞は452の全語彙中,123語であった.本調査における動詞の特徴として,2歳0ヶ月時で通過する語は123語中,12%であり,2歳6ヶ月時で通過する語は60%となった.このことからも,動詞は2歳0ヶ月から2歳6ヶ月の間に飛躍的に獲得される可能性が示唆された.
著者
西森 大地 山崎 裕司 中屋 久長 山本 双一 平賀 康嗣 片山 訓博 重島 晃史 高地 正音
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.59-61, 2011-03-31

下肢伸展運動を課題として,徒手による他動的誘導(以下,他動誘導)と徒手抵抗による誘導(以下,抵抗誘導)のいずれが運動再現性の点で優れているかを比較検討した.対象は,健常成人24名の右脚である.12名は靴ベラ式短下肢装具装着下(以下,装着群)で,残り12名は非装着下(以下,非装着群)で実験を行った.仰臥位,右膝関節最大屈曲位を開始肢位とし,他動誘導,抵抗誘導のいずれかのガイドによって開始肢位から再現させる屈曲角度(膝関節90°と60゜)まで誘導し,その運動を記憶するよう指示した.開始肢位に戻した後,自動運動によって運動を再現させ,誤差を求めた.膝関節60°の非装着群における誤差は,他動誘導,抵抗誘導の順に2.49cm,1.54cmであった。装着群では3.68cm,1.57cmであった.両群ともに抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).膝関節90°では非装着群において有意差を認めなかったが,装着群では抵抗誘導において誤差は小さかった(p<0.05 ).以上のことから,徒手抵抗を加えて運動を誘導する方法が正確に運動を指導することができるものと考えられた.
著者
寺尾 詩子 山崎 裕司 横山 仁志 大森圭貢 笠原 美千代 平木 幸治
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2004-03-31

本研究の目的は,昇段動作に必要な下肢筋力水準について検討することである.対象は,運動器疾患を有さない高齢患者166名(74.4歳)である.昇段能力は高さが40cm,30cm,20cm,10cmの練習台を用い,上肢の支持がない状態での昇段の可否を調査した.下肢筋力は,椅子座位,膝関節屈曲度位での等尺性膝伸展筋力を測定した.昇段能力が優れた群において膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.001).膝伸展筋力が体重の17%を下回る場合,いずれの段差においても昇段は不可能であった.筋力が30%を上回る場合,全ての症例が10cmの昇段が可能で,80%の症例は20cmの昇段が可能であった.筋力が40%を上回る場合,80%の症例が30cmの昇段が可能であった.さらに,筋力が50%を上回る場合,80%の症例が40cmの昇段が可能であった.本研究から,高齢患者における昇段能力の規定要因としては膝伸展筋力が重要であり,昇段動作が手すりなしで自立するためには最低限の下肢筋力が必要なことが示唆された.
著者
谷 勇介 石月 亜由美 尾熊 洋子 石井 俊夫
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.45-49, 2011-03-31

本研究は,大腿骨近位部骨折術後の歩行能力関連要因の検討および受傷前歩行能力の早期再獲得(術後4週間以内)に影響する要因について検討した.対象は大腿骨近位部骨折術後患者15例であった.歩行能力の関連要因として患側荷重率,疼痛,患側・健側の等尺性膝伸展筋力,握力を測定した.歩行能力の分類には順位尺度を用い,歩行補助具の補助が大きい順に平行棒,歩行器,四点杖,T字杖,独歩とした。測定日は各歩行補助具で監視歩行が20m以上可能となった日と術後1週毎とした.歩行能力と各関連要因との相関を求め,術後4週以内に受傷前歩行能力を獲得した者(以下,獲得群)8例と獲得できなかった者(以下,非獲得群)7例に分け比較した.歩行能力と各関連要因は患側荷重率で強い相関(rs=0.70,p<0.01)を認めた.獲得群と非獲得群の比較では,獲得群で術後1,2,3週目の患側荷重率が有意に高値を示した(p<0.05 ).本研究において,大腿骨近位部骨折術後の歩行能力の獲得に最も関連する要因は患側荷重率であり,術後1週目の患側荷重率は受傷前歩行能力の早期再獲得を予測する指標になり得る可能性が示唆された.
著者
新 智子 木村 誠子 大島 真理江 諏訪 光地子 香取 牧子 小澤 一樹 宮崎 和紀 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-30, 2013-03-31 (Released:2019-06-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

統合失調症と自殺企図のある下腿切断患者に対する義足歩行訓練に応用行動分析学を取り入れた介入を行い,その効果について検討した. 介入当初,義足への荷重訓練に対して,拒否的な言動,疼痛の増悪,握力の低下などの問題行動がみられた.介入では,対象者の受け入れやすい行動目標(歩行)を取り入れ,歩行距離の延長という強化刺激をフィードバックすることで,理学療法への参加行動を定着させることに成功した.次いで,対象者の好みの活動と要求をアンケートによって把握し,それを行動目標とした.目標を到達するため必要な動作能力とそれを獲得するために必要な訓練内容を本人に説明し,同意のもとに実施した.その結果,実用的な歩行形態の獲得,階段昇降動作の獲得など,さらなる移動能力の向上を図ることが可能であった.最終的に対象者は自宅退院に成功した. 以上のことから,今回の介入は理学療法への参加行動を定着させる上で有益な方法と考えられた.
著者
櫻木 理恵 稲田 勤 高地 正音 有田 未来 吉村 知佐子 福留 梨佐 塩見 将志 石川 裕治
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.21-24, 2011-03-31 (Released:2018-11-28)
参考文献数
3

本研究では,動詞を表すシンボルについて,シンボルの受信者側が,ノーマルのシンボル,具体物を追加したシンボル,動きを表わす線(動線)を追加したシンボルから受けるイメージを比較するために,成人を対象として,動詞に相当するシンボルのイメージ測定を行った.結果,ノーマルシンボルと具体物を追加したシンボルでは,15語中13語に有意差が認められ,具体物を追加したシンボルの方が高い評定値を示した.また,ノーマルシンボルと動線を追加したシンボルでは,15語中11語に有意差が認められ,動線を追加したシンボルの方が高い評定値を示した.さらに,具体物を追加したシンボルと動線を追加したシンボルでは,有意差のみられた語で,動線を追加したシンボルより具体物を追加したシンボルの方が高い評定値を示したものは11語中8語,具体物を追加したシンボルより動線を追加したシンボルの方が高い評定値を示したものは11語中3語であった.今後,シンボルへの追加情報を検討する場合には,具体物や動線の線画性や立体性にも配慮する必要があると思われた.
著者
小松 雄一 橋田 亜弥 川村 真紀子 小松 加代子 石元 美知子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.85-92, 2001

老人性痴呆性疾患療養病棟の作業療法の目的は,精神症状や問題行動を有しているにもかかわらず,寝たきり等の状態にない痴呆老人であって,自宅や他の施設で療養が困難な者に対し,これらを入院させることにより,精神科医療とケアを提供するものである.当病棟患者は,いずれも家庭での介護が困難となった重度痴呆患者,身体症状は軽度だが精神症状が重度の患者,身体症状・精神症状共に重度の患者である.また,精神疾患を併せ持つ患者も多い.当病棟では,作業活動の中でみられる認知・記憶・行動などの痴呆症状を評価し,作業活動がスムーズに実施できるように作業内容の工夫や,スタッフの対応等の環境設定を行うようにしている.今回,塗り絵・貼り絵・雑巾縫いのグループ活動を通し上記について報告する.
著者
重島 晃史 坂上 昇
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-46, 2006-03-31

傾斜計は土木建築分野で用いられる角度計であるが,測定面に傾斜計を乗せるだけで容易にその傾斜角度を測定できるので,ROM測定としての応用が考えられる.本研究の目的は,2種の傾斜計の同時的妥当性および再現性を検討することである.対象者は本学院の男子学生12名(平均19.75±0.75歳)で,本研究の主旨の理解と同意を得た.測定器具には,SAKAI社製東大型角度計(以下,角度計),(株)新潟精機製傾斜計(以下,傾斜計),および傾斜計に鉄製の棒を取り付けた傾斜計(以下,軸付き傾斜計)の3種を用いた.傾斜計は移動肢の体表に密着させ測定し,軸付き傾斜計は鉄製の棒を移動軸に合わせることで可動域を測定した.手順は,まず本学院理学療法学科2年生(以下,PTS)に角度計を使用させ,左右の股屈曲,SLR,膝窩角,足背屈を測定し,同様の手順で軸付き傾斜計,傾斜計の順で行った後,経験年数6年目の理学療法士(以下,RPT)においても同様の測定方法および測定部位で行った.再現性の検討には数日の間隔(平均4.5±4.58日)を置き,再度同様の被検者,手順で測定を行った.統計解析では両傾斜計の同時的妥当性をPearsonの相関係数,再現性をPearsonの相関係数および級内相関係数,各測定方法間の差を分散分析・多重比較にて検討した.傾斜計および軸付き傾斜計の同時的妥当性はPTS,RPTともに強い相関を示し,再現性はPTSで股屈曲を除き良好,RPTではすべての測定部位で強い再現性を示した.また,測定方法間ではRPTの軸付き傾斜計で差を示した(p<0.05).本研究において傾斜計はROM測定の器具としての可能性を示した.また,軸付き傾斜計では測定姿勢や器具の当て方を考慮する必要があると考えられた.傾斜計はホームセンターで購入できる安価な物であり,軽量で片手でも扱いやすいので臨床や地域でも有効であることが示唆された.
著者
岩本 さき 笠井 新一郎 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 塩見 将志 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-32, 2001-03-31

平成11年度より,香川県坂出市では,1歳6ヶ月児健診で未通過だった子どもの発達状況のフォローを一つの目的として,保健婦と言語聴覚士による2歳児を対象とした発達相談(以下,2歳児相談)を行っている.しかし,実施に際して,評価時間の短さや,子どもの語彙発達を評価する指標がない点が問題として挙げられた.そこで,2歳児相談時にスクリーニングとして使用できる語彙チェックリストを作成することを目的とし,2歳児の語彙発達の現状を明らかにするための調査研究を行った.調査の対象者は,香川県坂出市内の全保育所(12施設)に所属する1歳11ヶ月から2歳11ヶ月の子どもの保護者であり,161名であった.調査においては,名詞・代名詞・抽象語・動詞・形容詞・形容動詞・副詞・感動詞を含む,全語彙数452個のチェックリストを,調査用紙として用いた.分析を加えた結果,2歳児相談でスクリーニングの指標となる平均語彙数は,2歳0ヶ月児で183.9語,2歳6ヶ月児で288.7語であった.また,2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月にかけて350語を超えており,グラフはほぼ横這い状態を示した.これらの結果から,今回用いたチェックリストの適用範囲は2歳9ヶ月以前と考察された.
著者
平賀 康嗣 栗山 裕司 宮﨑 登美子 柏 智之 片山 訓博 重島 晃史 稲岡 忠勝 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-41, 2019

本研究では,健常者のハムストリングスに対するストレッチを継続的に実施し,持続的なストレッチ効果が現れる治療期間について検討した.対象は,健常者14名(男性7名,女性7名)である.介入前右膝窩角は,137.7±12.1度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の右膝窩角は,それぞれ144.4±13.0度,152.7±10.5度,155.6±7.7度,162.0±6.2度であった.2 週目以降,開始時と比較し膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).介入前左膝窩角は,138.8±12.4度であった.介入1 ,2 ,3 ,4 週目の左膝窩角は,それぞれ143.9±12.4度,151.3±7.8度,154.3±8.2度,160.7±6.1度であった.2週目以降,膝窩角は有意に増大していた(p<0.01).明確な膝窩角の改善は, 2 週目以降と説明することが妥当なものと考えられた.