- 著者
-
松下 泰祐
古田 充
島田 直幸
今井 淳裕
岡 香奈子
勝間 勇介
松岡 佑季
大田 南欧美
末光 浩太郎
和泉 雅章
- 出版者
- 一般社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.5, pp.229-234, 2021 (Released:2021-05-28)
- 参考文献数
- 16
症例は66歳,女性.人工血管内シャントにより維持透析されていた.発熱のため前医を受診し感染症疑いで入院.入院第1病日よりセフトリアキソン(CTRX)2 g/日の投与開始.第3病日人工血管感染の診断となり,改善を認めないため第10病日手術目的にて当院に転院.第16病日人工血管部分置換術を行った.第17病日より意識レベルが低下し,第18病日に昏睡状態となった.頭部CT・MRIや髄液検査で特異的所見を認めず,CTRXによる脳症の可能性を考えた.CTRXは蛋白結合率が高く血液透析(hemodialysis: HD)では除去効率が悪いため,第19病日に血液吸着(hemoadsorption: HA)を定期のHDに併用し,明らかに意識レベルが改善し,第21病日には入院前と変わらない意識レベルまで回復した.後日判明したHD・HA併用前の血中CTRX濃度は306 μg/mLと高値であり,HD・HA併用を1回行うことにより約3分の1に低下した.また,髄液中CTRX濃度も26 μg/mLと著明に高値であった.以上よりCTRX脳症であったと確定診断した.