著者
亀田 啓悟 松下 泰章
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-19, 2008-04

伝統的な経済理論に従えば政府財政の悪化は長期金利を上昇させはずである。しかしOECD諸国中最悪の財政状況にあるわが国の長期金利は、依然として低位安定を続けている。本稿ではWachtel and Young (1987)等を参考に財政赤字と長期金利に関するイベントスタディーを行い、財政赤字の悪化が長期金利に与える影響を分析する。財政赤字の予想値には財務省の『予算の後年度歳出・歳入への影響試算』による4年度先財政赤字予想値を、長期金利には10年物国債の最長期物利回りを利用した。実証分析の結果、国債市場の整備がほぼ完了したとされる2000年以降において、財政赤字の予期せざる1兆円の変化が、長期金利を約0.15〜0.25bps上昇させることが確認された。この結果は、海外の先行研究結果と比べ小規模な反応であるものの、昨今の日本の低金利を考えると妥当な反応と思われる。