著者
亀田 啓悟
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-24, 2008-02

本稿では、わが国の民間消費に対する非ケインズ効果の存否をSolved-out型消費関数を応用したHjelm(2002)の手法で実証分析した。わが国経済を対象とする先行研究はすべてPerotti (1999)のオイラー方程式を応用した方法のみが採用されており、この点が本稿における新たな試みである。この結果(1)わが国においても財政再建時に非ケインズ効果が発生しており、構造的基礎的財政収支対GDP比の前年度変化1%、あるいは前年との累積変化1.5%の改善は民間消費を約1%改善する、(2)財政再建規模を同0.8%、1.2%にすると利用するデータによっては非ケインズ効果の発生は確認できず、非ケインズ効果を期待するならばより大規模の財政再建が必要である、(3)非ケインズ効果の発生は財政再建の構成やその時期の為替レート変化、公的債務残高とは無関係であり、規模のみが重要である、(4)財政拡大期には非ケインズ効果は確認できない、の4点が明らかとなった。
著者
亀田 啓悟 松下 泰章
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-19, 2008-04

伝統的な経済理論に従えば政府財政の悪化は長期金利を上昇させはずである。しかしOECD諸国中最悪の財政状況にあるわが国の長期金利は、依然として低位安定を続けている。本稿ではWachtel and Young (1987)等を参考に財政赤字と長期金利に関するイベントスタディーを行い、財政赤字の悪化が長期金利に与える影響を分析する。財政赤字の予想値には財務省の『予算の後年度歳出・歳入への影響試算』による4年度先財政赤字予想値を、長期金利には10年物国債の最長期物利回りを利用した。実証分析の結果、国債市場の整備がほぼ完了したとされる2000年以降において、財政赤字の予期せざる1兆円の変化が、長期金利を約0.15〜0.25bps上昇させることが確認された。この結果は、海外の先行研究結果と比べ小規模な反応であるものの、昨今の日本の低金利を考えると妥当な反応と思われる。
著者
柴田 愛子 森 徹 曽山 典子 岡村 誠
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1_a-15, 1999-10

Bullying in school which would be detrimental to the development of human resources is a serious problem in Japan as well as in other countries. Bystanders rarely report instances of bullying to teachers, parents and other authorities. In our study, bystander behavior is modeled as a non-cooperative game by assuming that bullying can be stopped by a teacher only when more than a certain number of students report the instances. Every bystander stands to gain from the resolution of bullying activity (i.e. the consumption of public goods). But when a bystander reports this activity, that bystander will have to deal with psychological and / or physical costs (i.e. the private costs) if the total number of reports falls below the required minimum. We see that one of the two stable symmetric Nash equilibria is reached, depending on the threshold numbers, payoffs and the costs of reporting. At one equilibrium, all bystanders report the instances of bullying to their teacher. and at the other equilibrium, no one reports. The results of our experiments support our model and the expected payoff-maximizing behavior of bystanders. From this the major policy implication reached is that by lowering the number of students in a classroom, reporting activities of bystanders would increase. Other policy suggestions which could serve to increase reporting activity of bystanders include reducing the threshold number for reporting from students, increasing the disutility of students' observing bullying behavior, and mitigating the psychological and / or physical costs for the reporting of bullying.
著者
長峯 純一
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-26, 1999-11

本稿は、長峯(1998)で提示した公共投資の地域間配分に関する政治-経済モデルを踏襲し、前回の県レベルの道路投資を対象にした実証分析をさらに発展させ、新たな分析視点を織り込むことを意図する。ここでいう政治-経済モデルとは、資源配分、地域間再分配、景気(雇用)対策という公共投資に期待される複数の政策目的と政治プロセスからの影響力を同時に考慮しようとする実証モデルである。今回考慮した分析視点は、第1に、国が投資主体となる道路投資(直轄事業)と県が投資主体となる道路投資とを区別し、両者の配分構造の違いを分析すること、第2に、利益集団たる建設業の多寡が道路投資の大きさと相関をもっている可能性を考慮すること、第3に、中央官僚の地方自治体への天下り出向が、その地域への道路事業や補助金配分への橋渡しになっている可能性を考慮することである。実証結果は、国の道路投資と県の道路投資の決定要因が微妙に異なり、前者については、国(建設省)が各県の道路投資に対するニーズ(面積)を睨みながら、都市地域から地方へと再分配している様子が示唆され、後者については、道路投資額と国庫補助額の同時決定の分析枠組みが支持され、各県への国庫補助額(1人当たり)が道路需要の充足と地域間再分配という両側面に答えていることが示された。政治家、官僚、建設業者の影響については、一部で有意かつ興味深い結果が示されたものの、全体的には今後の課題となった。