著者
大山 博 寺島 彰 山岡 義典 松井 亮輔
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

韓国の社会的企業制度はまだ課題も多いことも明らかにした。しかし、わが国では長年、福祉的就労と一般就労という二分法的な制度運用で、その問題が多いことが指摘されてきたが、社会的企業制度は、両者の架け橋的な役割を果たすものとして、わが国でも社会的意義が大きいことがいえる。(2)滋賀県と箕面市の制度は障害者を中心的に対象としており、韓国の脆弱階層より狭くなっている。今日、社会的排除へのインクルージョンが求められており、財政負担問題も含めて国レベルでの制度化が必要である。(3)地域での社会的企業創設に関しては、現在の福祉的就労の状況から、商品開発、生産管理、販路開拓、流通と販売手法などの共同化を図り、さらには、専門性あるスタッフをコーディネーターとして配置した中間支援組織が重要であることを明らかにした。
著者
松井 亮輔
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-113, 2008-08
被引用文献数
1

2006年12月に国連総会で採択された障害者の権利が2008年5月3日に発効したことで、障害者差別禁止法制定に向けての各国の取組みがさらに加速することとなると予想される。しかし、ADAの経験からも明らかなように、障害者の雇用機会の均等と待遇の平等を実現するには、差別禁止アプローチだけでは不十分である。EU諸国がEU指令のもとに取組んでいるように、差別禁止アプローチと雇用率制度など、積極的差別是正措置の組み合わせがより効果的であろう。さらに、障害者の就労実態を本格的に改善するには、それらの組み合わせに加え、障害者の能力開発をすすめるための教育や職業訓練の向上、社会的企業や協同組合等、地域ベースの多様な働く場の創出など、総合的な取組みが不可欠と思われる。そして、こうした総合的な取組みが実効をあげるための前提として、障害者も含む、すべての人がディーセント・ワークにつきうるような社会的条件整備が求められる。