著者
松井 孝道
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.164-173, 2017-09-30 (Released:2017-11-05)
参考文献数
16

骨と結合し軟組織とも生体親和性の高いチタンは耐食性にも優れ,現在インプラントに使用される主な材料となっている.しかし,口腔内である一定の条件下におかれると腐食するとの報告がある.チタン腐食の原因となる因子としてチタン表面におけるpH,溶存酸素濃度,フッ素の存在などが挙げられる.インプラントの周囲環境となる口腔内は種々の細菌による有機酸,pHの低い食品・飲料物,炎症に伴うpH の低下,深いインプラント周囲ポケット内における溶存酸素濃度の低下,フッ素入り歯磨剤の使用など過酷な環境下にある.臨床においても,インプラント周囲肉芽組織からのチタン元素の検出やチタン表面において腐食孔が多数観察されている.チタンの組織内溶出はインプラント周囲炎において骨吸収を加速させるという報告もあり,さらには粘膜貫通部の鏡面研磨面における多数の腐食孔の形成はインプラントのメインテナンスに不利となる.基礎研究において歯磨剤レベルでのフッ素のチタンに対する腐食の影響が指摘される中,臨床でもチタンの腐食が観察される以上,現時点ではその原因となりえるフッ素入り歯磨剤のインプラントへの使用はインプラントの長期安定を維持するうえで注意を要すると思われる.
著者
森永 太 伊東 隆利 阿部 成善 添島 義樹 土屋 直行 松井 孝道 飯島 俊一 川口 和子
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.170-179, 2018-06-30 (Released:2018-07-25)
参考文献数
15

長期症例のインプラントに対して,しばしばインプラントの残存率が一つの成功基準として使用される.しかし,患者の実態を知るにはそれだけでは十分といえない.この研究の目的はインプラント治療を受けた患者の長期経過の実態を知ることである.我々は,インプラント治療後20年以上経過した患者に対しアンケート調査を行った.患者は九州インプラント研究会に所属する歯科医師によって治療された.アンケートは1,168名に送付し509名からの回答を得た(回答率44%).回答者の内,78%がインプラントに何も問題ないと答えた.また,歯の経過については68%が何もないと回答した.食事については84%が何でもよく噛めると回答した.また93%がインプラント治療に満足していると回答した.