著者
松元 賢
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

我が国の食用アスパラガス病害の90%以上は植物病原菌による病害で、中でも、アスパラガス茎枯病は一旦罹病するとその根絶は極めて困難であるにも関わらず、食用アスパラガス種内には病気に強い品種が見つかっていない。アスパラガスでは耐病性品種の育成が強く望まれているが、本植物は多年生で交雑しにくく、品種育成には多大な年数がかかり、かつ、アスパラガス品種内には耐病性形質が存在しないなど、耐病性品種育種のハードルは極めて高い。申請者らの研究チームは、日本産アスパラガス植物の一種であるハマタマボウキと食用アスパラガスとの交雑種が、茎枯病に耐性があることを世界で初めて明らかにした。研究対象となるハマタマボウキは、日本固有種の一種で九州北部沿岸のみに自生する希少種であるため、生息域は限定的で非常に狭く、本植物の病害記載が存在しないことから、病害に強い植物であると認識されていた。しかし、近年の現地調査と昨年度の病害調査から、罹病化したハマタマボウキを発見しており、複数種の植物病原菌類によって複合的に感染している背景を明らかにした。これらの結論は、従来のハマタマボウキがもっている病気に強いという認識を覆すことを示唆した。同様に、ハマタマボウキ自生地近隣は、九州の食用アスパラガスの大生産地であることから、アスパラガス属植物間の相互感染による新規病害の発生や病害の進展化、希少種の生息域の減少が懸念される。さらに、ハマタマボウキの持つ耐病性のポテンシャルから、育種研究を目的とした乱獲や国外への流出が耐病性品種の育種の障害となる可能性が示唆される。そこで、本年度は、ハマタマボウキの植物病原菌によって発生する病害の生物的防除を目的に、ハマタマボウキの根圏に生息する微生物を分離し、根圏微生物の拮抗性を利用した生物的防除の可能性について検討した。
著者
松元 賢 土屋 健一 セイン・サン・エ ハ・ヴィエト・クオン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、まず、熱帯アジア土壌病害調査として、ベトナム北部紅河流域やミャンマー中山間地区の病害調査を行い、熱帯地区をモデルとした土壌病害発生シミュレーションの基礎データを収集した。また、高温障害の植物根圏に及ぼす影響解析では、九州大学ファイトトロン(人工気象装置)において擬似的な熱帯環境を構築し、熱帯の水田環境におけるイネ紋枯病の発生様相についてのモニタリングに成功した。さらに、香草植物や薬用植物の抗菌・殺菌成分を素抽出し、土壌燻蒸による土壌病害の生物的防除への利用可能性について検討した結果、極めて殺菌・抗菌作用の高い植物成分として、オイゲノールや精油成分の抽出に成功した。