著者
松元 達也
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度前半では、前年度からの継続的な実験により実験データの再現性を確認するとともに、直径2、3、4、5及び6mmのアルミナ球形粒子を用い、蒸気流量及び粒子層厚さをパラメータとする粒子層の運動挙動に関する系統的に詳細な実験を行った。ここでは、同一の蒸気流量では粒径が小さい程、粒子層内の流路における蒸気泡の粒子に対する抗力の効果が大きくなり粒子層を流動化するのに対し、粒径が大きくなると蒸気泡は粒子層内の流路をすり抜けるように流れ、粒子に対する抗力の効果が小さくなり流動性は小さくなることを明らかにした。また、二次元矩形体系水槽による粒子層内部の沸騰開始の挙動を可視化し、層内部での沸騰及び運動挙動の詳細を明らかにした。今年度後半では、原子炉の炉心損傷事故時に形成されるデブリが平均数百μmのオーダーにあることから、500μm及び1mmの先に用いた固体粒子に比して小さな粒子の挙動特性に注目し、小径粒子に対応した実験水槽を新たに製作し、また粒子物性の影響を評価するために密度、熱伝導率等が大きく異なるアルミナ及びジルコニアの両粒子による比較実験を行った。ここでは、アルミナの小径粒子は沸騰により大きく流動し、蒸気泡の粒子層内での合体が観察されるが、高比重のジルコニアの小径粒子の場合では、アルミナの場合に比して流動性は小さく、粒子層内における蒸気泡は分散的な挙動であり、両者の挙動には顕著な差異が見られ、密度と表面の濡れ性等の物性の違いが流動挙動に大きく影響することを明らかにした。さらに、粒子形状による流動挙動への影響を評価するために、球形と非球形のアルミナ粒子による同条件の比較実験を行い、球形粒子において早い段階で分散的な沸騰挙動に移行することに対して、非球形粒子では初期段階で粒子層に形成される単一流路での沸騰挙動がある段階で急激に周囲に広がる挙動を示すことを明らかにした。