著者
松内 佳子 中島 節子
出版者
日本移植・再生医療看護学会
雑誌
日本移植・再生医療看護学会誌 (ISSN:18815979)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-13, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
31

本研究の目的は、小児期に生体肝移植を受けた患者が捉えている家族の様相について明らかにすることである。ナラティヴ・アプローチを用い、対象者6名にインタビューを実施した。対象者に共通したテーマとして【家族の気遣いや苦労への気づき】【家族の結束】【ドナーとなった親との強固な絆】【同胞への自責の念】を見出した。小児期に生体肝移植を受けた対象者たちは、成長発達過程にある療養生活での体験や、家族や医療者等から移植当時の話を聞くことにより、生体肝移植や療養生活を通じた経験を意味付けし、家族の様相を捉えていた。そして、自身の生体肝移植や療養生活における困難が家族の結びつきを強化した出来事と解釈する一方で、同胞への影響を省みた自責の念を抱いていた。同胞への自責の念やドナーとなった親との強固な関係性は、移植患者の自己概念や家族全体の関係性への影響を及ぼす危険性があると示唆された。