著者
松内 佳子 中島 節子
出版者
日本移植・再生医療看護学会
雑誌
日本移植・再生医療看護学会誌 (ISSN:18815979)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-13, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
31

本研究の目的は、小児期に生体肝移植を受けた患者が捉えている家族の様相について明らかにすることである。ナラティヴ・アプローチを用い、対象者6名にインタビューを実施した。対象者に共通したテーマとして【家族の気遣いや苦労への気づき】【家族の結束】【ドナーとなった親との強固な絆】【同胞への自責の念】を見出した。小児期に生体肝移植を受けた対象者たちは、成長発達過程にある療養生活での体験や、家族や医療者等から移植当時の話を聞くことにより、生体肝移植や療養生活を通じた経験を意味付けし、家族の様相を捉えていた。そして、自身の生体肝移植や療養生活における困難が家族の結びつきを強化した出来事と解釈する一方で、同胞への影響を省みた自責の念を抱いていた。同胞への自責の念やドナーとなった親との強固な関係性は、移植患者の自己概念や家族全体の関係性への影響を及ぼす危険性があると示唆された。
著者
阿部 育子 習田 明裕
出版者
日本移植・再生医療看護学会
雑誌
日本移植・再生医療看護学会誌 (ISSN:18815979)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-15, 2022 (Released:2022-04-16)
参考文献数
24

本研究は、 臓器移植看護の倫理的場面において、レシピエント移植コーディネーター(以下、RTC)が抱く苦悩の構造とその関連要因を明らかにすることを目的とした。全国の移植施設に勤務するRTCを対象に自記式質問紙調査を実施した。その結果、84名(回収率47.5%)から回答が得られた。臓器移植看護の倫理的場面として、「臓器移植全般」、「生体移植」、「脳死移植」の3つの領域30場面の回答を基に、探索的因子分析を行った。その結果、【移植医療の不確かさ】、【RTCとしての自信のなさ】、【倫理的責務の障壁】の3つの因子構造が示された。また、各因子の下位尺度得点を目的変数とし、[個人特性]、[RTC特性]、[環境特性]、[倫理特性]を説明変数として重回帰分析を行った結果、説明率は低かったものの関連要因として『立場』、『RTC経験歴』、『担当移植件数』があった。