著者
松原 健一/稲本 勝彦/土井 元章/森 源治郎/今西 英雄
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科学術報告 (ISSN:13461575)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.33-40, 2002-03-31
被引用文献数
1

景観形成のための利用を想定して, 秋植え球根37種類, 春植え球根16種類について, ケヤキZelkova serrata Mak.を主体とする落葉樹林下における植栽適性を調査・評価した。夏季の樹林下区の樹冠開空率は15%程度, 冬季は80%程度となった。夏季の樹林下での光合成有効光量子束は無遮蔽区の5%程度となり, 日平均地温は無遮蔽区と比較して3〜5℃低かった。1年間の据置栽培後, 供試した1/4近くの種類の植物が無遮蔽区, 樹林下区の両条件下で生存していなかった。生存していた種類の多くで, 2年目の出芽率は, 秋植え, 春植え球根とも無遮蔽区と樹林下区でほぼ同様に高かったが, アリウム, クロッカス, フリージアなどいくつかの種類では無遮蔽区で低く樹林下区で高くなった。秋植え球根類の開花率は無遮蔽区で高く樹林下区で低くなったものが多く, 両区とも同様に高かったものも相当数認められた。また, 一部の種類では樹林下区における開花が無遮蔽区と比べて遅れた。春植え球根類の多くは樹林下区の据置き栽培で生存はしていたものの, 旺盛な生育はみられず, 開花率が低かった。これらの結果より, 秋植え球根のうち, ロドフィアラ, リコリス, ニホンスイセンなど, 出葉時期が樹冠に葉がない時期と重なる冬季出葉型の10種類の球根植物が落葉樹林下への植栽に適するものと考えられた。