- 著者
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松名 隆
- 出版者
- 室蘭認知科学研究会
- 雑誌
- 認知科学研究
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.11-29, 2007
本稿は、イオル(iwor)というアイヌ語について、その意味するものを先ず文献的に辿り、さらにそれが今日の私たちに提起する問題を、二風谷ダム訴訟を提起した故・萱野茂氏( 2006 年逝去) と故・貝澤正氏( 1992 年逝去)( 以下敬称略) の言説を踏まえながら考察したものである。最初にイオルの概念について、アイヌ- カムイという対照概念が示すアイヌの世界観を踏まえて、その意味を諸文献の検討から確認し、次に、北海道におけるイオル解体の歴史的検討を行い、それと関わるニ風谷ダム裁判判決において認定されたアイヌの文化享有権について、イオルの視点からその問題点を指摘し、さらに上記のお二人が遺した言説を取り上げつつ、イオルの新しいあり方についての筆者の提言を表明する。