著者
石川 容平 松室 堯之 篠原 真毅
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.23-38, 2018-11-05

第5次エネルギー基本計画が審議され、平成30年7月3日閣議決定された。パリ合意の影響を強く反映した方針が示され、世界の潮流を見据え、再生可能エネルギーを主力電源とする明確な方向性が打ち出された。2050年の温室効果ガスの削減目標は80%である。本稿では、その具体的達成手法のひとつとして、洋上再エネの最適組み合わせをエネルギー源とする海洋インバースダムと、水素貯蔵システムが協調した200万kWクラスの洋上エネルギーセンター構想を述べる。バックアップ電源が不要で高速需給調整機能を持つ洋上発電所建設は再エネ拡大を牽引する。このような洋上発電所の世界展開には地政学的制限を伴うが、一方でこのシステムは最小規模(20MW)の宇宙太陽発電衛星の地上局を構成するため、地政学的条件に殆ど影響されない究極の宇宙再エネシステム発展の足掛かりとなる。ここでは小型発電衛星の建設可能性と発展性について論じる。宇宙太陽エネルギーは世界の共有資源であり、その賦存量も地上より遥かに大きい。エネルギー利用の冗長性と国際紛争軽減が期待される。