著者
矢吹 正教
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.16-22, 2018-11-05

空を見上げると、青空や真っ赤な夕焼け、雨上がりに現れる虹、太陽の周りに現れる光の輪など、多くの大気光学現象と出会うことができる。これは、太陽光が大気に入射することで引き起こされた現象であり、大気を構成する様々な物質の光学特性を反映している。この特徴を利用し、"レーザー"を大気中に照射して人工的に光散乱を起こすと、直接的な計測が難しい上空などの大気環境をモニタリングすることができる。本稿では、地球大気環境を形成する大気成分の特徴と、それらを遠隔で計測できるライダー(レーザーレーダー)手法について紹介する。
著者
坂崎 貴俊 加納 靖之 大邑 潤三 服部 健太郎
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.64-70, 2015-11-10

1856年09.月23日(旧暦安政3年08月25日)に江戸を直撃した台風について調べた。主として安政風聞集に基づき被害状況を報告すると共に、各地の日記記録などを併せて台風の進路を含む当時の気象場を推定した。その結果、台風は太平洋上を猛スピードで北上し相模に上陸、江戸の西側を通過して北へ抜けたと推定される。猛烈な風による吹き寄せ効果により急激な高潮が生じたことが、人的・物的被害を拡大させた最大の要因と考えられる。
著者
銭谷 誠司 加藤 恒彦
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.62-77, 2018

宇宙プラズマ研究では、電磁場の中で荷電粒子の運動を解き進めるプラズマ粒子シミュレーション(Particle-in-cell; PICシミュレーション)が広く活用されている。本稿では、相対論的な粒子運動および全体運動を伴う相対論的プラズマ系をPICシミュレーションで扱うための数値解法を、大きく2つのカテゴリに分けて解説する。前半は、Sobol法などの粒子分布を静止系で初期化する数値解法を紹介する。そして、このような粒子分布にローレンツ変換を施す方法を解説する。後半は、粒子運動の時間積分法としてBoris法とvay法を紹介し、相対論的プラズマ流に特有の数値問題を議論する。This tutorial article describes numerical methods to deal with a relativistic plasma in particle-in-cell (PIC) simulation. We first overview numerical methods to in itialize particles that follow relativistic velocity distribution functions. Then we describe how to Lorentz-boost the plasma distribution. Next, we introduce two particle integrators, the Boris method and the Vay method. We further present a numerical problem in a magnetized plasma ow at a relativistic speed. It is found that the Boris solver leads to a numerical boost in the momentum space, which depends on the square of the timestep.
著者
大村 善治
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-8, 2010-10-01
著者
石川 容平 松室 堯之 篠原 真毅
出版者
京都大学生存圏研究所
雑誌
生存圏研究 (ISSN:1880649X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.23-38, 2018-11-05

第5次エネルギー基本計画が審議され、平成30年7月3日閣議決定された。パリ合意の影響を強く反映した方針が示され、世界の潮流を見据え、再生可能エネルギーを主力電源とする明確な方向性が打ち出された。2050年の温室効果ガスの削減目標は80%である。本稿では、その具体的達成手法のひとつとして、洋上再エネの最適組み合わせをエネルギー源とする海洋インバースダムと、水素貯蔵システムが協調した200万kWクラスの洋上エネルギーセンター構想を述べる。バックアップ電源が不要で高速需給調整機能を持つ洋上発電所建設は再エネ拡大を牽引する。このような洋上発電所の世界展開には地政学的制限を伴うが、一方でこのシステムは最小規模(20MW)の宇宙太陽発電衛星の地上局を構成するため、地政学的条件に殆ど影響されない究極の宇宙再エネシステム発展の足掛かりとなる。ここでは小型発電衛星の建設可能性と発展性について論じる。宇宙太陽エネルギーは世界の共有資源であり、その賦存量も地上より遥かに大きい。エネルギー利用の冗長性と国際紛争軽減が期待される。