著者
松宮 奈賀子 森田 愛子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.16, no.01, pp.196-210, 2016-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
16

本研究の目的は,教員養成課程で学ぶ大学生を対象に,英語母語話者とのティーム・ティーチング(以下T.T.)形式での模擬授業の効果を「指導への自信」「不安」「具体的な学び」の3 観点から検討することである。外国語活動の指導法を学ぶ演習科目を履修した大学生131 名を対象として,ALT との模擬授業の実施前後における「指導への自信」の変容,「指導への不安」の実態,「ALT との模擬授業からの学びの具体」を質問紙により調査した。その結果,模擬授業前の段階で特に学生が「自信がない」と評価したのがALT との指導に関する事項であり,事後には自信に関する質問項目すべてにおいて,得点の向上が見られた。また,ALT との模擬授業は全員が実施したのではなく,実施した学生と,それを観察したのみの学生がいたが,この2 群間に自信の向上に関する差異は見られず,観察によっても一定の学びを得ることができることが明らかになった。具体的には,打合せの重要性や打合せを効率的に実施する方法,授業内でのALT の役割等についての学びがあったことが自由記述より明らかになった。このようにALT とのT.T.に関し,一定の学びを得,指導への自信は高まったものの,英語力に関する不安が依然として残ることも明らかになった。そのため,ALT との模擬授業から授業づくりや協同して指導にあたる方法を学ぶことは有効であるが,合わせて英語力の向上を目指すことがALT とのT.T.指導への自信に繋がるであろうことが明らかになった。
著者
松宮 奈賀子 森田 愛子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.95-110, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

本研究の目的は小学校教員養成課程に在籍する大学生を対象に,外国語活動指導への不安を軽減するための方策の一つとして「学級担任の役割を意識した英語スピーチ練習」を実施し,その効果を検討することである。スピーチ練習は2013 年度後期の外国語活動指導法に関する演習科目の中で4 回に渡って実施し,127 名の大学2 年生が参加した。本スピーチでは単に流暢に話すことを目指すのではなく,児童が分かるような工夫をしながら伝える,という「学級担任としての発話」を意識することを求めた。4 人グループで順番にスピーチを行い,スピーチはタブレットを用いて録画した。スピーチ後には録画された映像を見て,振り返りを行い,次回への課題を明確にさせた。本スピーチ練習を体験し,事後アンケートに回答した122 名の学生の本実践の効果に対する自己評価を調査した結果, 85%以上の学生が本実践は「学級担任としての英語力」の向上に役立ったと評価し,基本的には本実 践は英語力向上感に寄与するものと受け止められた。しかしながら「教壇に立って英語を話すことに自信がついた(不安が減った)」と回答した学生は全体の39.3%にとどまり,自信の向上(不安の減少)につながるとはいえない結果であった。ただし,履修後に残る不安・課題について調査したところ,英語力を最大の不安と回答した学生の割合が例年と比較して20%程度減少し,「自信がついた」とまではいえないものの,本実践が指導への不安軽減に功を奏した可能性があると考えられた。