著者
立林 めぐ美 川田 暁 松尾 仁子 中野 創
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.382-386, 2014 (Released:2015-02-13)
参考文献数
18

65歳,男性。20歳頃より多量の飲酒歴があった。初診の約6ヶ月前より露光部に水疱形成を繰り返すようになり,当科を紹介され受診した。初診時,顔面に色素沈着,両手背に水疱・びらん・痂皮がみられた。病理組織学的所見は表皮下水疱で,PAS 染色にて真皮上中層の血管壁に PAS 陽性物質の沈着を認めた。臨床検査では,軽度の肝機能障害と尿中ウロポルフィリンの著明な上昇を認めた。HCV 抗体,HBs 抗原,HBs 抗体は陰性であった。患者末梢血を用いて遺伝子検索を行ったが,uroporphyrinogen decarboxylase 遺伝子,hemochromatosis 遺伝子の変異は同定されなかった。後天性の晩発性皮膚ポルフィリン症と診断し,禁酒を指導した。さらにプロトポルフィリンIXの吸収波長の最大のピークが 405~410nm にあることから,405~450nm の波長域の光を吸収するように作製したファンデーション剤を使用させたところ,現在水疱の新生はみられていない。本症においては可視光を防御するファンデーション剤の使用が有用と考えられた。(皮膚の科学,13: 382-386, 2014)