著者
松尾 光舟 斉藤 邦史
出版者
情報ネットワーク法学会
雑誌
情報ネットワーク・ローレビュー (ISSN:24350303)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.45-66, 2023-11-17 (Released:2023-11-17)

本稿では、アバターに対する法人格付与の意義、及びいわゆる「中の人」に対する責任追及について検討し、以下の考察を得た。第一に、法人格付与の主要な意義は、財産の隔離と構成員の有限責任にあり、その設立およびガバナンスの設計には経営破綻の局面を想定する必要があるから、仮に立法により法人格を認める場合でも、現行の法人制度との平仄を確保するべきである。第二に、アバターの法人に対する、自然人(「中の人」)による関与の形態は、所有者(受益者)または経営者(受託者)としての関与と構成したうえで、現行の法人制度と同様の責任追及を認めるべきである。第三に、法人格のないアバターも、構成員から独立した社団(または財団)としての社会的な実態を有する場合には、権利能力のない社団(または財団)として、固有の人格権を認める余地がある。