著者
冨松 剛 西山 保弘 中園 貴志 松尾 啓太 内田 陽一朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F1019, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】 交代浴は、温浴に冷浴が加わる部分浴であり、温熱および寒冷療法の相乗効果を備えている。交代浴は、慢性炎症症状、外傷性血腫の吸収に効果を認め、近年では複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症状改善にも有効であると水関(1994)は報告している。我々は、温浴および冷水温の異なる交代浴を用い、その皮膚温変化について検討し若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象は、研究に理解を得た健常成人ボランティア(男性5名、平均年齢28.5歳)。部分浴は、温浴および2つの交代浴を用い、右手のみを施行した。温浴は40°Cの温水に24分間浸した(以下、温浴)。交代浴は温水40°Cと冷水15°C(以下、15°C交代浴)、冷水5°C(以下、5°C交代浴)の2種類の冷水温を用いた。交代浴の浸水方法は水関らの方法に準じた(温水4分、冷水1分×4 最後は温水)。皮膚温測定は、サーモグラフィーTH3100(NEC三栄株式会社製)を使用し両側手背部中央の皮膚温を測定した。測定間隔は安静時、施行直後、15分、30分、45分、90分、120分、150分、180分後の計9回の皮膚温を測定した。サーモグラフィーの測定は日本サーモロジー学会のテクニカルガイドラインに準じた。統計処理は、paired t-test及び mann-Whitney U-testを行った。【結果】 右検側肢の平均皮膚温の変化について、温浴は施行直後、皮膚温が上昇し、交代浴はいずれも下降した。2つの交代浴は120分を経過すると180分まで、いずれも低下した皮膚温が回復傾向を示した。左非検側肢の平均皮膚温の変化は、どの部分浴も施行直後に皮膚温は低下した。しかしその後、検側肢に同調した皮膚温の回復変化を示した。特に15°C交代浴はその傾向が強く観察されました。統計学的には、安静時に対する各皮膚温の有意差は認められなかった。【考察】 交代浴は、温熱による血管拡張効果に寒冷療法の一次的血管収縮と二次的血管拡張の作用が重複することが考えられる。非検側肢の影響については、三崎は体性-交感神経反射が関与し両側に出現すると述べている。また、施行後低下した皮膚温は、180分以上をかけて緩やかに反応し、回復傾向を見せた。【まとめ】 冷水温の異なる交代浴の皮膚温変化を検側肢及び非検側肢に渡り検討した。温浴に比べ皮膚温の回復は、交代浴が長時間作用していた。