- 著者
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松尾 治幸
大野 和彦
中島 浩
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.4, pp.855-865, 2002-04-15
共有メモリ型並列計算機における同期処理オーバヘッドを削減する手法として,我々は同期操作に後続するメモリアクセスを同期成立確認以前に実行する機構specmem を提案してきた.この機構の特徴は,投機失敗の検出やそれに伴う計算状態の復元を,機能メモリを用いたコヒーレント・キャッシュの簡単な拡張により実現することにある.これまでの評価では,負荷の変動によって同期区間が伸縮するようなプログラムに対してspecmem が有効であることが確かめられている.しかし同時に,投機によりキャッシュ・ミスペナルティが増加し,プログラムによっては性能が低下してしまうことも明らかになっている.そこで本報告ではspecmem の改良方式として,投機的更新を示す新たな状態の追加と,通常のメモリで構成される2次キャッシュの導入を提案する.SPLASH-2ベンチマークを用いた評価を行った結果,Radix Sortでの性能劣化を8.6%から0.7%まで削減できることや,LU分解の性能向上率が14%から16%に増加することが明らかになった.