著者
松尾 秀邦 高橋 治郎 鹿島 愛彦
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究によって新知見とすべき事項は下記の五項目である.1.岩湧寺植物群(Iwakiji Flora):伊藤大一(1986)により発見された. この化石植物群は白亜紀後期の植物群としては珍しい落葉樹林相を示す.2.Archaeojostera属について:郡場・三木(1931, 1958)によって新属とされた被子植物化石である. 一部の人々によって生痕化石説が唱えられているが, この化石の大半は植物化石である. しかし, 一部には生痕化石の疑いの残る部分もあって今後の研究が望まれる化石の一つである.3.鮮新世火成活動による変質:この現象は和泉砂岩層群の分布域の西端部で観察される. 鮮新世火成活動(主に含黒雲母安土岩, 石英安山岩など)によって, この地層の基部に近かい礫岩及び砂岩層が侵され, その硬度を増し, 割栗石その他の石材として採石されている.4.和泉砂岩層群の西端域について:この層群の地層の分布の西端部は愛媛県長浜町青島とされているが, その分布は対岸の大分県臼杵市近効大野川流域まで拡がる可能性がある. 化石こそ少ないが, 岩相の酷似が極め手となる. 今後の研究が望まれる.5.和泉砂岩層群の堆積構造について:これらの地層が堆積した後, 中央構造線を形成した地殻運動によって, 東西の曳きずりが働き, 南北性断層が発達している. これらの断層に区切られた6区の地域では, それぞれ東に落ちる向斜構造が認められる. この構造については, 和泉山脈西端部において松尾(1949)が始めて提唱し, それ以来幾多の研究者によって解明が試みられているが, 未だに説明できない構造の一つである.