著者
松尾 裕幸 柗本 真佑 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1262-1272, 2018-04-15

近年,ソフトウェアの電力消費の削減のため,APIやアルゴリズムなどの実装手段の違いによる電力消費の比較研究がさかんに行われている.しかしながら,我々は,プログラムの実行時間とその総消費電力量との間には,強い相関があるのではないかという仮説をたてた.この仮説が正しければ,電力消費量の削減という問題は,実行時間をいかに短縮させるかという問題に帰着させることができる.本研究では,異なるソーティングアルゴリズム,およびJavaの異なるCollectionsクラスについて,その総消費電力量および実行時間の両方について調査する.実験の結果,両者の間には非常に強い正の相関が存在することが示された.また回帰分析の結果,プログラムの実行時間,単位時間あたりの消費電力量の順に,総消費電力量に与える影響が大きいことが分かった.これらの結果から,電力の計測基盤を用いずとも実行時間が短い実装手段を選ぶことが,プログラム全体の省電力化につながることが示唆された.