著者
渡辺 大登 柗本 真佑 肥後 芳樹 楠本 真二 倉林 利行 切貫 弘之 丹野 治門
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1564-1573, 2022-10-15

自動プログラム生成(APG)の実現を目指し,生成と検証に基づく自動プログラム修正(APR)を転用した手法が提案されている.APRはバグを含むソースコードをすべてのテストケースに通過するように全自動で改変する技術である.APRを転用したAPGでは,初期状態のソースコードを未実装,つまり複数のバグが含まれていると仮定し,ソースコードの改変,評価,選択を繰り返してソースコードを目的の状態に近づけていく.一般的なAPRでは改変ソースコードの評価指標として,テストケース通過数がよく用いられる.この指標は単一バグの修正を目的とした場合には問題にならないが,複数バグの修正時にはコード評価の表現能力不足という問題につながる.よって,初期状態に複数バグの存在を仮定するAPGにおいては,解決すべき重要な課題である.そこで,本研究ではAPGの成功率改善を目的とした多目的遺伝的アルゴリズムの適用を提案する.また,多目的遺伝的アルゴリズムによる高い個体評価の表現能力を利用した,相補的なテスト結果の2個体を選択的に交叉する手法も提案する.評価実験として,プログラミングコンテストの問題80問を題材に提案手法の効果を確かめた結果,成功率の有意な向上を確認した.
著者
松尾 裕幸 柗本 真佑 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1262-1272, 2018-04-15

近年,ソフトウェアの電力消費の削減のため,APIやアルゴリズムなどの実装手段の違いによる電力消費の比較研究がさかんに行われている.しかしながら,我々は,プログラムの実行時間とその総消費電力量との間には,強い相関があるのではないかという仮説をたてた.この仮説が正しければ,電力消費量の削減という問題は,実行時間をいかに短縮させるかという問題に帰着させることができる.本研究では,異なるソーティングアルゴリズム,およびJavaの異なるCollectionsクラスについて,その総消費電力量および実行時間の両方について調査する.実験の結果,両者の間には非常に強い正の相関が存在することが示された.また回帰分析の結果,プログラムの実行時間,単位時間あたりの消費電力量の順に,総消費電力量に与える影響が大きいことが分かった.これらの結果から,電力の計測基盤を用いずとも実行時間が短い実装手段を選ぶことが,プログラム全体の省電力化につながることが示唆された.
著者
井垣 宏 福安 直樹 佐伯 幸郎 柗本 真佑 楠本 真二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.701-713, 2015-02-15

ソフトウェア開発教育の一環として,ScrumやXPといったアジャイルソフトウェア開発を採り入れたチームによるソフトウェア開発演習を実施する大学が増加しつつある.一方で,演習によるアジャイルソフトウェア開発教育には複数の課題が存在する.代表的なアジャイル開発フレームワークの1つとして知られるScrumでは,プロジェクトを検査し,自己組織的にプロジェクトの状況に適応し続けることが求められる.しかしながら,チームでの開発経験が少ない受講生には,プロジェクトの状況がどうであるかを検査すること自体が困難である.また,受講生によるチーム開発では,担当するタスクの種類や量が偏りがちである.我々はこれらの課題の解決を目指し,チケット駆動開発と呼ばれる開発手法とScrumフレームワークを組み合わせることにより,プロジェクトを定量的に評価する枠組みを構築した.実際に我々のプロジェクト定量評価の枠組みを用いてチームによるソフトウェア開発演習を実施し,複数の定量評価基準に基づいて,チームごとのプロジェクト評価を実施した.The universities which teach agile software development, such as Scrum and XP are increasing in number. On the other hand, there are some problems in agile software development exercise. The Scrum known as one of the leading agile software development framework requires inspection and adaptation of projects. However, it is difficult for students with few team software development experiences to inspect their projects. Moreover, the kind and quantity of the tasks which each student takes charge of tend to become imbalanced. In this paper, we propose a framework which combines a ticket management system and the Scrum for quantitative evaluation in team software development exercise. We conducted practical software development exercise with using our framework as a case study.
著者
井垣 宏 福安 直樹 佐伯 幸郎 柗本 真佑
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1266-1269, 2013-11-15

ソフトウェア開発を伴うPBLでは,コンパイラや統合開発環境,版管理システムといった演習環境の導入,保守に関する課題と開発プロセスを受講生に如何に重視させるかという課題が存在する.我々は演習環境をクラウド化(PBL as a Service)することで,演習環境の導入コストの削減と受講生のモニタリングを実現した.クラウド化された演習環境を前提とすることで,プロジェクトにおけるプロセスの定量的評価尺度の策定が可能となり,プロセスを重視したPBLを実施できるようになった.